世界が飛翔する刻

第一.五章 思いを繋ぐガイド

2010/3/10

事故から生還したあと、互いに両思いであったことを知ったマサトはフィリオをデートに誘っていた。星空と美味しい食事にお腹いっぱいになった後はいよいよお楽しみが待っていた!

~2069年11月~

〈こちらほむら管制室。貴機の自己診断結果を受信しました。こちら側の診断結果と相違ありません。HGP6708たてやま、発進を許可します〉

マサト達の目の前に、宇宙機が一機浮かんでいた。居住空間がある先端は、角を落とした直方体になっており、後方に行くに従って徐々に円みを増している。エンジンが搭載されている後ろ側は円筒形だ。直径は約四メートル。長さは約十二メートルで、大型バスを四台重ねたくらいの大きさである。

「フィル、もう直ぐ発進するみたいだぞ!」

マサトはその宇宙機を食い入るように見つめていた。あの事件から一週間が経ち、怪我はすっかり良くなったようだ。尻尾にはまだ包帯を巻いているが、翼の添え木はもう取れている。全体的に体つきがしっかりしているドラゴン種の中でも、マサトの属するスカイ・ドラゴン種は特に頑健な者が多い。マサトもその御多分に洩れず、傷の治りが早かったのだろう。 

そのマサトの横では、こちらも大層ご機嫌なフィリオが、発進のその瞬間を今か今かと待ち構えていた。エア・ドラゴン種の特徴である長くふさふさした毛が、楽しそうに無重力空間を漂っている。

「こんな近くで見れるなんて、スゴイ! やっぱり、本物は質感が違うよね。演習のときのハリボテとは大違いだよ」

マサト達が居るのは、宇宙機の管制室。ほむらの無重力区画の端に位置しており、静止軌道上に多数浮かぶ人工衛星のメンテナンスに向かう宇宙機をコントロールしている。本来であれば、まだ一般人に程近い実習生が、プライベートの時間に入れる場所ではない。しかし、マサトがバクを通じてハヤトとリョウコに働きかけ、特別に見学を許してもらえたのだ。意外とあっさりと許可が下りた背景には、被害者に対する弁済の意味もあるのだろう。

「あっ! 離れた!」

フィリオが動き出した宇宙機を見て叫ぶ。ほむらをゆっくりと離れた宇宙機は、機体側面のスラスタを吹かし、ほむらに対して垂直方向に上昇してゆく。宇宙機がスラスタを噴射する度に、まばゆいオレンジ色の光が一瞬放たれる。化学推進の光だ。

「そろそろ、メインエンジンが動くよ」

マサト達と共に、宙を漂っていたバクが言った。安全確保のため、管制域を出るまでの間は、宇宙機の制御情報が全てほむらに伝えらる。AIであるバクはそれをモニタしているのだろう。

そのバクが言ったとおり、十分に距離をとった宇宙機がメインエンジンを作動させたようだ。真っ黒な背景に隠れて分かりにくいが、ぼんやりとした青い光が見える。宇宙機が搭載するのは、十台のイオンエンジン。グリッドと呼ばれる多数の孔が空いた板の間に高電圧をかけ、イオンを加速することで推進力を得る。推進剤の消費が少なくてすむ電気推進の一種だ。化学推進ロケットのような派手さは無いが、透き通った青白い光を放ってゆっくりと加速するその姿は、なかなか幻想的である。

「行っちゃったね」

フィリオは次第に遠ざかる宇宙機を、残念そうに見送る。

「でも、俺達も次の実習ではアレに乗るんだぞ。しかも、来年の今頃にはもっと大きなやつで本当の宇宙探査に出かけるんだから!」

マサトが興奮冷めやらぬ様子で、ずいぶんと小さくなった宇宙機を指差す。間近に宇宙機を見ることで、パイロットになるという夢の実現が現実味を帯びてきた。もちろん、その夢はもっと大きな夢への第一歩だ。本当の目標は、フィリオを悲しませた原因を明らかにしたその先に広がっている。だが、まずは一人前のパイロットになることである。

「そうだね、マサト。これからが、すっごく楽しみ!」

フィリオが笑みを漏らした。マサトには、その顔が希望に満ち溢れているように感じた。

「お兄ちゃん達、とっても嬉しそうだね! ねえ、次は何するの? 手は繋がないの?」

二人の姿をじっと見ているバクのその目は、何かを期待しているかのようだ。マサトは、そのバクの目線がずっと気になっていた。

フィリオも同じように感じたのだろう。そっとバクの肩に手を触れる。

「ねえ、バク君。別に僕達は何もしないよ? 何を吹き込まれたのか知らないけど、あんまりリズ君の真似はしない方がいいと思うなぁ」

「うー……だって、サトル兄ちゃんに教えてもらったお話が、ホントかどうか確かめたかったんだもん」

「まさか……サトル君まで……」

フィリオは深いため息を吐く。お調子者のリズだけならまだしも、真面目な常識人で通っているサトルまでが、そのような行動をとるとなると、今後のグループ活動の先行きが不安なのだろう。

マサトはバクに頼んでこの場をセッティングして貰ったのを、少し後悔した。思い返してみれば、話を切り出したときのバクは妙に協力的だった。そのときから、色々と期待していたのだろう。バクは外見が無害な子供なため、ついつい油断しがちになるが、その本体は人間を遥かに凌ぐ計算能力を持つハイブリッドコンピュータなのである。誕生して間もないため、無邪気なのは間違いない。しかし、その思考経路は人間の子供とは大きく異なっており、持っている知識も膨大だ。しかも、自分を含めた周囲の影響で、その方向が良くない方向にずれて行っているようにも思える。

「バク、今回は本当にありがとな。今度お礼するから、今はこれくらいで勘弁してくれよ。もうそろそろお腹も減ってきたし、そろそろ行かないと……」

「駄目だよマサト。そんなに甘やかしちゃ。こういうことは、キッチリしてとかないと後が大変なんだよ!」

バクが体に不釣合いなほど大きな四枚の翼を羽ばたかせ、すばやくマサトの背後に回りこんだ。かなり素早い。フィリオの危険性を、もうしっかりと認識しているようだ。そして、すがるような目でマサトを見上げる。

今回の件でバクにお世話になっている都合上、フィリオの味方をする訳にはいかない。それに、バクがこういうことに興味を持ち始めたことには、自分がバク達の目の前で、フィリオに対してとった行動が大きく関係しているのだろう。

「まあまあ。今日はいいもの見せてもらったんだし……。後で、サトルにどういうことかちゃんと聞いとくからさ」

マサトは心中で、悪者になってもらったサトルに謝りながら、この場を何とか丸く治めようとする。

「うーん。なんかスッキリしないけど……」

「それに、ほら、もうそろそろ予約してる時間だし。リョウコさんに教えてもらったレストランなんだから、遅れたら申し訳ないぞ」

それでも納得しようとしない親友の表情を見たマサトは、その体を無理矢理抱きしめ、ガッチリと自分の体に固定する。そして、翼を大きくはためかせて、出口へと向かった。

「わっ! ちょっと、やめてよ!」

フィリオは抵抗しようとするが、力では敵わない。両手がふさがっているマサトは、代わりに尻尾を振りながら、バクに別れの挨拶をする。

「マサト兄ちゃん、ありがとう! がんばってね!」

自分がとった行動を嬉しそうに見つめるバクを見て、マサトは後でしっかり口止めをしておかないとと思った。リズに下手な話しが伝わると、面倒なことになる。

マサト達が食事をしているのは、レストランとは名ばかりの、ほむらの職員食堂である。ただ、全面がガラス張りとなっており、見える星空は実に壮大である。

ほむらは宇宙空間に浮かんでいるのだから、さぞかし星がたくさん見えるのだろうと思いがちだが、人工重力区画で生活している限り、その考えは誤りである。多くの一般人が長期間生活する人工重力区画では、安全性と快適性を確保するために色々な対策が行われている。その一つが、直接光を遮る外光スクリーンである。その目的は二つ。隕石・デブリの衝突に対する耐久性を高めることと、昼と夜を作り出すことである。観光地としての一時滞在ならばよいが、実際に生活を行うとなると、多少の景観は犠牲にしなければならないのだ。

一応、星空が見えることを売りにしたレストランもあるにはあるが、とても高価で、マサト達の手が届くものではない。その点で、この職員食堂は今回のデートにうってつけである。

「宿森先生たち、うらやましいなぁ。毎日こんなに綺麗なところで食事できるなんて」

フィリオが青く光る地球を見ながらぼやいた。食事自体は、特筆すべきところの無い極普通のメニューであったが、大気による揺らぎの無い真空が見せる、クリアな宇宙の姿が最高のスパイスとなっていた。

「そうだな。俺達も早く一人前にならないとな!」

マサトは目の前に広がる星空を見て思った。こんな素敵な光景でも、毎日見ていれば飽きるのだろうか? いや、そんなことは無いだろう。宇宙は見るたびに違う姿を見せる。しかも、呆れるほど広い。とてもじゃないが、生きている間に飽きることなど出来ないだろう。

「これから、いろんなとこ行ってみたいね、マサト」

フィリオが海老のフリッターを摘みながら言う。この実習が始まるまでは、フィリオの両親の死に直接関与した宇宙空間に、フィリオ自身が足を踏み入れることに、多少心配もあった。しかし、どうもそれは取り越し苦労だったようだ。フィリオは思ったより強い。そして、自分も予想より頑張れている。一足す一が二以上になるというのは、このことなのだろう。

食事と星空でお腹を一杯にしたマサト達は、少し買い物をした後に家に帰り着く。そして、ゆっくりとリビングで寛いでいた。

「今日はありがとね。とっても楽しかったよ!」

「なんだよ、突然。まあ、どういたしまして……」

照れながら返事をするマサトを、フィリオがずっと見つめてくる。

「なんだ?」

「いや、マサトって可愛いなあと思っちゃって」

その回答に、マサトは怪訝な表情を返す。今日は特に何も失態はしてないはずだ。それなのに、可愛いと言われるのは納得いかない。

「今回のプラン、結構前から計画してたんでしょ? バク君とかリョウコさんにも色々お願いしてさ。確かに、告白してからは初めてのお出かけだけど、別に今までも一緒だったじゃない? なのに、わざわざ準備するなんて、マサトって意外とロマンチックなんだなあって思ってさ」

自分としてはごく自然のことだと思って計画したつもりだったのだが、自分でも気付かないうちに、必死さが出てしまったのかも知れない。マサトにとっては、フィリオに想いを伝えることが出来たのが、それほど嬉しかったのだ。その気持ちを、軽く取られた様な気がして、マサトはぷいっと横を向く。

「そんなに怒んないでよ。感謝してるのは本当なんだし。僕よりちゃんとしてるのが凄いなって思っただけだよ。それに、マサトと一緒に感動できて、最高の初デートだったよ! みんなに自慢したいくらいに」

そう言って、腰に手を回してきたフィリオの顔をマサトは見つめた。褒められて、直ぐに顔が綻ぶ。我ながら単純である。きっとこれからも、フィリオには隠し事は出来ないだろう。

「本当か? まあ、そういうことなら、許してやってもいいけど……。あっ、でも、リズ達には絶対言うなよ!」

「うん。分かってるよ。初デートの内容は僕達の秘密だね」

実際には、もうバクに知られてしまっているため、秘密にするのは多分無理だろう。今後は、バクとの付き合い方も少し考えないといけない。マサトは、曇りの無い笑顔で自分を見つめる、ほむらのAIを頭に思い浮かべた。

「ねえ、マサト。今日は疲れたでしょ? 先にシャワー浴びてきてよ」

マサトにもたれかかっていたフィリオが、ふいに上半身を起こす。

「えっ? 俺はそんなに疲れてないから、後でも良いけど……」

「僕はちょっと気になることがあるから、マサトが先入ってよ」

強引な提案の仕方が多少気になったが、特に断る理由も無いマサトは、素直に着替えを取りに自分の部屋へ向かった。

マサトは緊張した面持ちで、背筋をピンと伸ばし、ベッドに座っていた。シャワーを浴びて、体はスッキリしたが、心の方は悶々としている。浴室を出て、交代するときにフィリオに言われた言葉が気になっているのだ。

――マサト、部屋で待っててね! 後で行くから!

一体どういう意味だろうと考える。いや、その意味は考えるまでも無い。恋人になった二人が夜することといえば、答えは一つ。

長きに渡り、マサトがこのときを待ち望んでいたのは確かだ。それが実現するなど、夢のようである。しかし、いざそのときになると、全然落ちつかない。どういう手順でフィリオをリードしようか想像を膨らませるが、上手くまとまらない。ふとベッドの汚れが気になって、ハンドクリーナーを手に取った。

マサトがようやく掃除の結果に満足したとき、ドアが開けられる。ハンドクリーナーを片手に持ったマサトと、タオルを腰に一枚巻いただけのフィリオの目が合う。傍目に見ると、かなり間抜けな構図である。

「……何、してるの?」

「いや、掃除だけど……。やっぱり、綺麗にしといた方がいいかなって思って……」

口に出してから、マサトは自分の言葉の意味に気付く。やる気は十分だと宣言したようなものだ。フィリオががっかりしたように、腕を組んでため息を吐く。器用にも、タオルは尻尾で押さえている。

「はぁ……マサトったら、ホントに恥ずかしいんだから……。さっ、それ仕舞ってよ!」

マサトはいそいそとハンドクリーナーを片付け、ベッドに座ったフィリオの横に遠慮がちに腰掛ける。

「……ごめん、フィル」

そのマサトを見て、フィリオは吹き出す。

「ぷっ! マサトってそういうとこが可愛いよね……」

フィリオの手が優しくマサトの顔に触れた。そのままフィリオの顔が近づいてきて、軽くキスをされる。

「ねえ、僕はタオル一枚だけなのに、マサトが服を着てるのは不公平だよね?」

マサトのパジャマに、フィリオの手が掛けられる。

「フィル、やめっ……」

抵抗しようとしたマサトの口が、再びフィリオに塞がれ、そのまま押し倒される。今度は軽い口付けでは無い。柔らかい舌が進入してきて、マサトの少しザラザラした舌が絡め取られる。マサトが気づいたとき、既に全裸に剥かれていた。

はあはあと息をするマサトを見て、馬なりになったフィリオがつぶやく。

「マサトの体……やっぱりおっきいね。でもここはちょっと可愛いかも……」

フィリオの視線が下腹部に注がれる。そこには、まだ完全には露出していない自分のモノがいる。

「フィル……恥ずかしい……」

体に似合わない、小さな声を聞いたフィリオが、突然マサトに覆いかぶさってきた。

「ホント可愛いんだから! もう、僕我慢できないよ!」

フィリオの手が、短い毛に覆われたマサトのお腹をゆっくりと弄る。一方で、その口はマサトの胸へと向かった。突き出た舌が、小さな突起を舐める。そのこそばゆい感覚に、マサトは身を捩じらせた。

「マサト、どう?」

「……分かんない」

フィリオがわき腹を撫でながら、大きく円を描くように突起の周囲を舐める。フィリオの顔を覆う、柔らかい毛が触れて心地よい。マサトは目を瞑って、その快い感覚に体を預けた。

マサトの中で徐々に性感が高まってきたとき、乳首に歯が立てられる。

「んっ!」

突然与えられた刺激に、マサトの口から甘い声が洩れる。

「感じてるの?」

「分かんない……。なんか……切ない感じがする……」

その回答に満足いかなかったのか、片手でマサトの内腿を攻め始めた。敏感な部分を避けて、大きく撫で回す。口はというと、目標を突起に絞ったようだ。軽く咬んだり、舐めたりを繰り返す。開いた片手はもう一方の乳首を嬲る。

「んあっ!」

フィリオの手が、突起を強く捻った瞬間、紛れも無い快感がマサトを襲った。思わず体を引いてその刺激から逃れようとする。しかし、フィリオが追いすがり、吸い付いた乳首をコリコリと咬む。

「んんっ!」

「どう? 気持ちよくなった?」

マサトは肩で息をしながら、小さく頷いた。

「やっぱり……僕が思ってた通り、マサトは敏感だね」

マサトはその言葉に、少しむっとした表情を浮かべたが、すぐに潤んだ目でフィリオを見つめた。この切なさを、何とかしたい。

「フィル……もう一回、キスしないか?」

「……マサトったら……いいよ」

今度は、マサトもフィリオの背に手を回し、その身を自分に引き付ける。自分からも積極的に舌を伸ばし、フィリオの口腔を攻めた。舌の付け根を舐め回し、つるつるした牙を舌先で確認する。

「んふぅ」

フィリオが甘美な声を漏らす。お互いの唾液を存分に味わった後、ようやく二人は顔を離した。口腔内の分泌物が、いやらしく糸を引く。

「フィル……俺……」

「分かってるよ。ここでしょ?」

フィリオの手が敏感な部分をそっと撫でる。その先端からは先走りがトロトロと流れ出し、腹の毛を濡らしている。

「凄いね、マサト……。こんなに濡れるんだ……。まだ触ってないのにね」

フィリオがその体液を指で掬い取り、嬉しそうに擦り合わせる。ヌルヌルとしたその感触を楽しんでいるらしい。

「マサトも見てみて、びっくりするくらい濡れてるから」

わざわざ指摘されなくても、自分の幹が濡れていることくらい分かっている。先ほどから、次々と粘液が這い上がってくる感触を尿道に感じているのだ。無言でいると、フィリオの手が、マサトの雄を優しく握って扱き始めた。ゆっくりと皮が剥かれ、弾け飛びそうなくらい真っ赤に膨らんだ亀頭が露になる。

――グチュ! グチュ!

フィリオの手のひらが上下するたびに、粘着質な音がする。それほど先走りの量が多いのである。

「ほら、僕の手がもうベトベト。どうしてくれるの? マサト?」

マサトの目の前に、体液で濡れたフィリオの手が差し出される。まるで、舐め取れと言わんばかりだ。恐る恐るその手に近づいた。石鹸のにおいに混じって、微かに牡の匂いがする。これが自分のモノが放っている匂いなのだ。ふと、その匂いに興奮を感じる自分がいることにマサトは気づく。早く、フィリオの匂いを確かめたい……。

マサトは丁寧にその指を舐め取った。まるでフィリオの猛りを咥えるかのように熱心に。ねばねばしたその液体は、少ししょっぱかった。

「ありがと。じゃあ、ご褒美あげるね!」

マサトが五本全ての指を綺麗にすると、フィリオの頭が下腹部へと向かう。

「うわっ! くうっ!」

敏感な先端が、あったかい粘液に包まれる。強い刺激に、マサトは思わず腰を引いた。

「ぷはぁ。いきなりはキツかった?」

「いいや。ちょっとびっくりしただけ……」

その言葉を聞いたフィリオは、マサトの竿を持ち、ゆっくりと舐め始めた。どくんどくんと脈打つ雄根を横から食み、上へ下へと焦らすように撫でる。空いた手は、短い毛に覆われた袋を包み、ころころと玉を転がす。何処で覚えたのだろうか? その手つきは手馴れたものである。絶頂を迎えられるほど強くは無く、かといって、無視できるほど弱くも無い。その絶妙な刺激に、マサトは直ぐ堪えられなくなって来た。

マサトがもじもじと太ももを動かしていると、竿を持ち替えたフィリオが、根元からその先端へと裏筋に沿ってゆっくりと舌を這わせた。その舌は雁の裏側へと向かい、普段あまり触れることの無いソコを刺激する。

「あうっ!」

敏感な粘膜に与えられる、鋭利な刺激に、マサトは思わず声を上げた。鈴口から新たな粘液がじわりと滲み出す。

「マサト、またお汁が出てきたよ?」

フィリオはぺろりと舐め取り、そのまま尿道をちろちろと刺激する。むず痒いその快感に、マサトの雄はまたも体液をあふれ出してしまう。時折、フィリオの毛が一層敏感になったその猛りに触れ、柔らかい舌の感触とはまた違った、少し痛いようなちくちくとした刺激を与えてきた。

「んはぁ……マサトの凄い……硬くなって、ビクビクしてる……気持ちいい?」

フィリオも鼻息が荒い。自分の行為に興奮しているのだろうか。普段は絶対に見ることの出来ない、親友の淫らな姿に、マサトは血肉を躍らせる。

「うん……すっごい気持ちいい。自分でするのと全然違う……フィルの舌、すっげえ柔らかいし……」

「そうかな? じゃあ、もっと気持ちよくさせたげる」

フィリオは一気に陽根を根元まで咥え込んだ。あふれ出たマサトの粘りと、自らの唾液を、ワザと音を立てて一気に吸い込む。

――ジュルッ! ジュルルッ!

マサトは手を胸に引き付けて、突然の刺激に耐えるように拳をぎゅっと握る。尻尾が跳ねて、フィリオの腹をばちんと叩いた。亀頭への直接の接触にあまり慣れていないマサトにとって、ヤスリで擦られるようなその強すぎる刺激は、気持ち良いを通り越して痛みに近いものである。自らの股間にしゃぶり付くフィリオの頭を押し、どうにか引き離そうとする。

「フィル! ちょっ、待って! 苦しいって!」

「んふっ! んふっ!」

フィリオはマサトの訴えには耳を貸さず、鼻で息をしながら一心不乱にマサトの強張りを攻める。口を窄めて、全体を暖かい口腔粘液で包み込んだかと思うと、舌を先端にまとわりつかせて、裏筋を刺激する。

マサトは、自分の陰嚢が、きゅっと収縮して、精を吐き出す準備をしたのを感じた。

「やばいって! もう出ちゃうよぉ!」

「えっ!?」

マサトの幹が太くなるのを感じたフィリオが口を離し、先端にある出口を凝視する。刺激は止んだが、既に準備を完了したその衝動は、もう止まらない。

「イクッ! 俺、イッちゃうっ!」

――ビュッ! ビュビュッ! ビュルル!

マサトは大声で叫びながら体を振るわせ、見事に達した。吐き出された白い粘液が、覗き込んだフィリオの顔を汚す。

「わっ!」

フィリオはその熱液に押されるように、ぺたんと尻餅をつく。自らの顔に出されたマサトの精液を手で確かめ、しばしの間、呆然と肩で息をするマサトを見つめていた。

フィリオがぽつりと一言。

「マサト……早い……」

「ごっ、ごめん……フィルのが気持ちよすぎたから、我慢できなかった……」

肩肘を突いて、上半身を起こし、自らの出した白濁液で汚した親友の顔を見る。その親友は顔をしかめ、大層機嫌が悪そうだ。

「それに、僕の顔に思いっきり掛けるし……。ほら、こんなにぐちょぐちょになっちゃったじゃない!」

フィリオが見せ付けるように、自分の頬を指差す。確かに、いつもはフサフサしているフィリオの毛が、今は粘液でべっとり濡れて台無しだ。普段よりかなり量が多かったようである。溜まっていたというのも一因だろうが、親友に大事なところを攻められて、いつもより遥かに興奮したというのが大きい。

マサトはその親友の怒りを少しでも減らそうと、フィリオの顔に手を触れて、毛にこびりついた自分の精液を拭い取る。粘液が指に挟まれる度に、くちゅりといやらしい音がした。フィリオの顔を優しく包み込んで、出来るだけ丁寧に体液を落とす。それでも、大部分は毛に張り付いたままだ。これはもう洗い流すしかない。

マサトがこれ以上綺麗にするのを諦め、伏目がちにフィリオと目を合わせる。

「ちょっと敏感すぎるんじゃない? いくら僕のテクニックが上手すぎるといっても、こんなに直ぐイッちゃうなんて……。マサトってえっちなんだから」

どこか自慢げである。マサトは、もう少し優しくしてくれても良いのにと思ったが、口には出さない。マサトにとって、最後の攻めは激しすぎた。しかし、それで見事に絶頂を迎えてしまったのだから、文句は言えない。

フィリオの下半身に目をやったマサトが、恐ず恐ずと口を開く。

「そんなこと言って、フィルだって勃ててるじゃん……」

「えっ! だって……マサトがえっちな声出すんだもん……」

急に語尾を細めたフィリオが顔を伏せた。先ほどまでの勢いが嘘のようだ。大きくなった自らの下腹部が目に入って、いっそう恥ずかしくなったのか、慌てて手で隠す。普段はワザと思わせぶりなことをする割りに、自分の意図しない反応には弱いらしい。その仕草を見て堪らなくなったマサトは、強気に出ることにした。

「フィルだって気持ちよくなりたいんだろ? ほら、その手をどけろよ。今度は俺が気持ちよくさせたげるからさ」

「……なんか、マサトにそういうこと言われるの、癪だなぁ……。まあいいや。優しくしてよ。あっ、あと、僕のおちんちんにはまだ触っちゃ駄目だからね!」

マサトは是を機に主導権を握ろうと考えていたのだが、フィリオにその気は無いらしい。とはいっても、フィリオはマサトに自分の体を委ねてくれた。

マサトは、フィリオをベッドに寝かせ、ゆっくりとその体を観察する。まず最初は、小さめの顔。マサトのように角は生えておらず、すこし丸みを帯びていて優しい印象を与えてくれる。口からはわずかに牙が覗き、目は少し不安そうだ。

「ちょっとマサト、あんまり見ないでよ!」

今までのお返しだとばかりにそれを無視して、目を下に向ける。フサフサの毛に覆われた胸の後ろには、大好きなオレンジ色の毛皮に包まれた翼。マサトは吸い込まれるようにその胸に頭を潜り込ませた。顔を、フサフサとした毛が優しく包む。思いっきり息を吸うと、鼻一杯に広がるボディソープの香り。そしてわずかに覗くフィリオ自身の香り。想像していたものより、ずっと穏やかな香りがした。

「マサト、こそばいよ」

「今はフィルの体を楽しんでるんだ。ちょっと待てよ」

マサトは角で傷つけないように注意しながら、何度もフィリオの胸に自分の頬を擦りつける。

「もう! マサトがこんなに変態さんだなんて知らなかったよ!」

「フィルが可愛すぎるんだよ! 俺のより柔らかくて、こんなにフサフサした毛皮を持ってるのが悪いんだぞ。それに、いい匂いもするし」

フィリオの体をじっくりと吟味していたマサトが、頬に突起が当たるのに気付く。これはと思って、長い毛を手で掻き分けてみると、小さな乳首が勃っているのを見つけた。

「ほら、やっぱりフィルも感じてるんじゃないか……」

嬉しそうにつぶやいたマサトが、ざらざらとした舌でその突起を刺激する。フィリオにやられたのを真似て、もう片手でもう一方の胸も弄る。

「ううっ」

フィリオのうめき声が聴こえた。期待に胸を膨らませて、マサトは顔を上げる。

「どうだ? 気持ち良いか?」

「あんまり……。僕はマサトみたいにえっちじゃないから、おっぱいじゃ感じないよ。ちょっとこそばいけど」

マサトは少し肩を落とした。もっとフィリオを気持ちよくさせる方法は無いかと思って、もう一度よく体を見る。気になるのは、やはりオレンジ色の翼。マサトは自分もベッドに飛び乗り、フィリオに覆いかぶさった。手を後ろに回して翼を優しく撫でる。さらに、頭を首筋に回し、ざらざらの舌で丹念に舐め上げた。

「あんっ!」

マサトが翼の付け根をこりこりと刺激したとき、フィリオが甘い声を上げた。

(やっぱ、フィルもここは弱いんだな……)

翼の付け根は神経が集中しているため、性感帯になりやすい。もちろん、マサトも例外ではない。そして、マサトが弱いポイントがもう一つ。

片手を翼から離し、フィリオの背骨を辿ってゆっくりと手を下に持ってゆく。そして、尻尾の付け根をくにくにと摘んだ。

「はうっ! マサト……ずるいっ!」

指を動かすたびに、面白いようにフィリオの体が跳ねる。刺激を与えながら自分の足をフィリオの内腿に絡ませ、体を密着させる。フィリオの大きな陰茎がももに触れるが、これはルール違反ではないだろう。

少しの間、その反応を楽しんでいたマサトだが、試しに手を止めてみた。フィリオは、目を瞑って胸の中で小さく息をしている。刺激が止んだことに疑問を感じたのか、薄く目を開け、マサトを見上げた。

「ん?」

その目を見た瞬間、マサトはフィリオをぎゅっと抱きしめていた。

「フィル! 可愛い! お前、可愛すぎるよ!」

親友を愛でる気持ちが、後から後から湧き出してきて止まらない。もっともっとこの可愛らしい存在を気持ちよくさせたい。自分の手で絶頂を迎えさせたい。そんな感情に突き動かされるように、マサトの手がフィリオの下腹部へと向かう。

「なあ、フィル。もう、ココ良いだろ?」

すっかり硬くなったフィリオのソコをちょんちょんと突く。

「はぁ……はぁ……マサトが……そんなに欲しいんならいいよ……」

もう我慢出来ないだろうに、それでも強がるフィリオが、なおさら愛おしい。頷いたマサトは、体を起こして、熱を帯びた雄根を眺めた。体に似合わず、かなり逞しい。すっかり剥けきっており、マサトのものより一回りは大きい。マサトのものが特に小さいわけではなく、人よりかなり大きめなのだ。その巨根に圧倒されると共に、少し羨ましいと感じた。

マサトは、目の前の猛りを手の平でゆっくりと包み込む。

「熱い……やけどしそう……」

フィリオの鼓動が手の平から伝わってくる。マサトは恐る恐る手を上下させる。

「んっ! マサト、もうちょっと強くしても良いよ……」

マサトの不安を感じ取ったようだ。その言葉を聞いて少し安心したマサトは、少し強めに握って、竿を扱いた。にじみ出る先走りを指先につけ、テラテラと艶かしく光る亀頭を指の腹で刺激する。

「んあっ! マサト……気持ち良いっ……」

空いた手で尻尾の付け根も刺激してやるマサト。フィリオの息遣いがかなり激しくなってきた。その反応に応えるように、自然と手の動きが早くなる。先端から透き通った体液が、湧き水のようにトロトロと湧き出てくる。

(なんだ、フィルも結構濡れるんじゃんか)

親友が快感を感じていることに気を良くしたマサトは、手の動きを一旦止める。そして自分の顔を熱く脈打つ大きな幹に近づけ、くんくんとその匂いを嗅いだ。その姿に相応しい、猛々しい雄の匂い。先ほど嗅いだ穏やかな香りとは違って、殴りつけてくるような攻撃的な匂いだ。鼻腔を通って、脳に突き刺さるその匂いを嗅ぐだけで、マサトはクラクラしてきた。

ごくりと息を呑んで、その先端を口に含む。口腔内に広がる野生の匂いが、マサトをさらに狂わせる。先走りが舌全体に広がり、味蕾が少し塩っぱいその味を伝えてきた。ピチャピチャと舌でかき回し、フィリオの味を口全体に馴染ませてゆく。

「ぷはぁ……フィルの……美味しいよぉ」

その目は完全に蕩け切っている。下へと向かった口が、精液が詰まった袋を口に含む。袋を守る毛が、口腔内を刺激した。痛みを与えないように、優しく玉を舌で転がし、手は強めに本体を扱く。軽く口を窄めるたびにフィリオの体が震えるのが分かる。

「ふあっ! マサトも……結構……上手いじゃない……」

袋を吐き出したマサトは、思いっきり口を開けて、目の前の強張りを頬張る。ドラゴン種の者は割りと大きく口を開けることが出来るのだが、それでも怒棒を全て飲み込むのは少し辛い。

「んはっ! んふぅ……」

それでも、その剛直を半ば無理矢理奥まで押し込んだ。口の中全体が、フィリオの熱い熱いモノで一杯になる。

「うわぁ……柔らかい……」

フィリオの快感をさらに高めるために、頭全体を動かし始める。マサトの口が、ガイドに沿って上下するたびに、ピチャピチャと粘着質の音を立てた。

「いいよ、マサトぉ……僕、とっても気持ち良いよぉ……」

――ジュル、ジュルッ! ジュルルルルッ!

フィリオがやったように、粘液ごと硬直を吸い込む。すると、その体がビクンと跳ねた。

「あっ、あっ! マサトッ! 気持ち良いっ!」

フィリオで満杯になり、すっかり狭くなった口腔内の隙間を、かい潜る様にざらざらの舌を動かす。親友を絶頂に導こうと、雁首や裏筋を懸命に攻める。

「ああっ、いいよ! マサト!」

マサトが視線を上げると、気持ちよさそうに喘ぐ親友の姿があった。それを見て、マサトは心底幸せそうな笑みを浮かべる。視線を感じたのか、そっと笑みを返しすフィリオ。その手が、マサトの頭をガッチリと掴む。

「はぁ、はぁ、ちょっと苦しいかも知れないけど、我慢してね。マサトがあんまり一生懸命にしてくれるから、僕もう限界なんだ」

そういうとフィリオは、腰を突き出し始める。強張りが喉の奥を突き、吐き気を催す。思わず口を閉じそうになるが、手を握ってなんとか耐えた。

「んふっ! んふっ! んふっ!」

酸素を求めて、鼻孔を一杯に広げる。最初は乱暴な行動に抵抗を感じたマサトだったが、次第に口腔内を犯されるその感触に酔って来た。舌を動かして口の中を出入りする怒棒を刺激し、積極的に喉の奥まで迎え入れる。マサトの四肢と尻尾は、完全降伏したかのように、だらんと弛緩していた。

――グチュ! グチュ! グチュ!

フィリオの雄が口を犯す音だけが、耳に入ってくる。自分がこんなにも親友に求められるという幸せ。その幸福感が心を支配していた。

「あっ! あっ! ああっ! マサト! 出すよ! 全部受け取って!」

フィリオが甲高い声を上げ、今までに無いほど、強く腰を突き出した。喉の奥までねじ込まれる。ただでさえ大きい剛直が、さらに膨らむのを感じた。

(来る!)

マサトがそう思った瞬間、口の中で熱い塊が弾け跳んだ。

――ビュバッ! ビュ、ビュ、ビュッ!

強い粘性を持つ、ゲル状の粘液が次々とマサトを撃つ。飲み込もうとするが、喉の粘膜にこびりついてなかなか奥へ入って行こうとしない。

(息が……出来ない)

マサトがフィリオのお腹を叩いて現状を訴える。スッキリした表情のフィリオが、ようやくマサトの窮地に気づいたようだ。慌てて自分の剛直を引き抜いた。

「けほっ! けほっ!」

咳き込むマサトの背中をフィリオが擦る。

「ごっ、ごめん。やりすぎた?」

マサトが大きく息を吸い込むと、青臭い臭気が鼻腔をくすぐった。改めて、口の中に出された精液を舌で転がす。少し苦くて、舌がピリピリする。

「嫌なら、出して良いよ?」

マサトは横に首を振って、だんだんさらさらになってきた白濁液を嚥下する。口元を流れ落ちようとする液体までも、舌で丁寧に掬い取る。咳き込んだときに少し溢してしまったが、大部分は飲み込めたはずだ。

「フィルがせっかく出してくれたのに、もったいないよ……」

そう言ったマサトは、吐精して少し柔らかくなったフィルの雄を愛おしそうに咥え、まだ少し残っていた精を綺麗に掃除した。

「……マサトッ!」

マサトの様子を見たフィリオが跳ね起き、抱きついてキスをする。舌をマサトの口腔に進入させ、まだ少し残っている自分の精を舐め取る。離れた二人の間に、体液が混じった橋が架かる。

「やっぱり、ちょっと苦いね、僕の……。マサト、有難う! こんなに美味しくないのに、頑張って全部飲んでくれて……。大好き!」

マサトの体が抱きしめられる。

「大好きなフィルのなんだから、不味い訳ないじゃん! どうだ? 気持ちよかったか?」

マサトが愛おしそうに、自分を見つめる顔を撫でる。

「もちろん! マサトのお口、最高だったよ! すっごく柔らかくて、あったかくて、しかも、ザラザラした舌がアクセントになって……。こういうの名器っていうのかな?」

マサトはワザと不機嫌そうな表情を作る。

「そっ、そんなこと言ったら、俺がそういう職業の人みたいじゃん……」

「違うよ! マサトのことが大好きな、僕だけの名器なの。そう、マサトの体は僕の物なんだからね!」

困惑した表情で親友を見つめるマサト。

「分からないの? これからマサトの体は、マサトの物じゃなくて、僕の物なの。だから、勝手に危ないこととかしたら、駄目なんだからね!」

そう言われて、ようやく気付く。フィリオは、先日の事故のことを言っているのだ。フィリオを助けようとして、ずいぶんと無理をした。幸い、大怪我にはならなかったが、まだその傷は残っている。そのことを心配しての発言なのだろう。

「じゃあ、フィルの体は?」

「もちろん、僕の体はぜーんぶマサトのもの! だから、僕も体を大切にしないとね」

(この可愛いフィルの体が、全部俺のもの?)

その言葉の持つ意味を、頭の中でじっくりと反芻する。マサトは、たった今自分の物になった体を強く抱きしめ、その存在をしっかりと確かめた。

マサトは体を少し離して問いかける。

「お前の体が俺の物ってことはだ……。俺が自由にメンテナンスしても、良いってことだよな?」

鼻息荒いマサトが、フィリオの体に手を触れる。その様子を見たフィリオが楽しそうな笑い声を上げた。

「ふふっ! やっぱりマサトはえっちなんだから。僕の体をメンテナンスして、どうしたいの? ちゃんと言ってよ」

マサトはその言葉を口にするのを少し躊躇う。ここまでやっておいて、恥ずかしがるのも変な話だが、そう簡単に割り切れるほどマサトは擦れていない。しかし、フィリオの態度を見る限り、言わないと先へは進めないようだ。マサトは軽く息を吸い込む。

「「一緒になりたい」」

フィリオがタイミングを見計らって、言葉を重ねた。自分の読みが当たったことがよほど嬉しかったのか、フィリオが手を叩いて喜ぶ。一方のマサトは、良い様にからかわれ、不満げだ。尻尾をばたばたとベッドに叩きつける。

「もう、マサト! そんなに怒んないでよ。僕もマサトと一つになりたいって思ってるんだから。マサトは気付いてなかったかも知れないけど、僕もえっちなんだよ?」

首を傾げるフィリオ。実にワザとらしい。

「……そんなの、知ってたよ……。じゃあ……続き、してもいいんだな?」

マサトは期待に胸を膨らませて、フィリオに問う。

「まあ、そんなに焦らないでよ。僕のおちんちんをしゃぶって、興奮しちゃったのは分かるけどさ。そういえば、途中で僕の顔見たでしょ? あのときのマサト顔、すっごくいやらしかったよ。ゾクってしちゃった」

「……そんなこと褒められても、あんまり嬉しくないよ」

先ほどのフェラチオ行為で、一度は萎えたマサトのモノは再び張り詰めている。今でも、あのときのことを思い出すだけで興奮するのだ。フィリオの言った様に、親友の硬直を咥えていたときの自分の表情は、非常に淫靡なものだったに違いない。しかし、それを一度でも口に出してしまうと、フィリオのされるがままになってしまう。

マサトは先手必勝とばかりに、フィリオの下腹部に手を持っていこうとする。しかし、その手はフィリオに阻まれる。

「待って、マサト。確かに、僕の体はマサトのものだけど、マサトの体も僕の物だってこと、忘れちゃったの? 僕もマサトの体をメンテナンスしないといけないよ。しかも、僕の方はちょっと不調なんだから、修理を急がないといけないよね?」

フィリオがマサトの尻尾の包帯を巻かれた部分を撫でる。どうも、マサトの意図とは真逆の方向に、話しが進んで行きそうである。

「そっ、そりゃあ……そうだけど……」

「ねえ、マサトは僕のこと、好き?」

「もちろん、好きだぞ?」

「なら、僕のお願い聞いてくれるよね? 僕は、大切な大切なマサトの体を、今すぐメンテナンスしたいと思ってるの。分かるよね?」

フィリオのつぶらな瞳にこうも見つめられると、マサトはただただ頷くしかない。

意を決したマサトは、自分の体をベッドに投げ出す。

「分かったよ! 好きにしろよ!」

「えへへ、ありがとう、マサト。ちゃんと気持ちよくさせてあげるからさ。さっきなんかより、もっともっとね! じゃあ、ちょっとだけ準備するから、ちょっと待ってて」

フィリオはそう言うと、部屋を出て行った。体液が垂れるのもお構いなしだ。床に落ちた粘液を見て、マサトは明日掃除しないとなと思った。

マサトが場違いなことを考えていると、直ぐにフィリオが戻ってきた。その手には、透明な液体が入ったボトル。ピンク色のシールが貼ってある。いわゆるローションだ。

「フィル!? なに持ってんだ?」

「えっ? ローションだけど?」

当然のことのように答えるフィリオ。

「それは分かってるけど……。何でそんなもんが出て来るんだ?」

「だって、マサトも痛いの嫌でしょ? 初めてなんだし、あったほうが良いかなって思ってさ。ほむらの中で探すの、大変だったんだよ。買うときもすっごく恥ずかしかったんだから」

マサトは、準備の良さに愕然とした。おそらく、全ては前々から計画されていたのだろう。そう考えれば、異常に手馴れたフィリオの行動にも納得がいく。直前になって、どうリードしようか考えていた自分が愚かだったのだ。おそらく、これからの動きも厳密にシミュレートされているに違いない。マサトは抵抗するのを諦め、覚悟を決めた。

フィリオがマサトをベッドに仰向けに寝かせ、自分はその股間を覗き込む位置に陣取る。

「ほら、マサト。膝を立てて。これから何をするかは分かってるでしょ?」

もうちょっとオブラートに包んだ言い方は無いのだろうかと思いつつも、マサトはその指示に従った。

「それじゃ、見えないじゃない……。もっと足を広げて、尻尾も横へ避けといてよ」

あまりの恥ずかしさに、泣きそうになりながら、フィリオの言うとおりにする。足を目一杯に広げ、その全てをさらけ出す。

「ううっ……恥ずかしいって、こんなこと……。せめて……もうちょっと優しくしてくれよぉ」

「僕だって恥ずかしいんだよ、こんなことするの。初めてなんだし。ほら、キスしたげるから、もうちょっと我慢して。ね?」

フィリオの口が軽く触れる。マサトが少し落ち着いてきたのを確認したフィリオは、ボトルのキャップを開けて、中身をマサトのお尻に垂らし、自分の指にもしっかりと塗りつけた。しばらく周囲をマッサージしていたフィリオの指が、孔に押し付けられる。

「じゃあ、行くよ? 力、抜いてね」

――ニュプ

「うあぁ」

思ったより、抵抗無くフィリオの指が飲み込まれる。その不思議な感覚に、マサトは小さな声を上げた。

「どう? 痛くない?」

「ううん。大丈夫そう……。でも、変な感じがする」

「じゃ、動かすよ?」

――プチュ プチュ

フィリオの指が出入りする度に、空気の洩れる音がする。少し恥ずかしい。抜き差しが繰り返されるにつれ、マサトは窄まりが徐々に熱を帯びてくるのを感じた。

「あっ!」

フィリオの指が根元まで挿し込まれたとき、口から声が洩れた。

「ちょっと解れて来たかな? もう一本、入れてみて良い?」

マサトはこくりと頷く。フィリオが一度指を抜いて、指を二本に増やし、再び孔にあてがう。そして侵入。抵抗はあったものの、何とか飲み込む。少しキツイ。

「マサト、もうちょっと力抜いて」

フィリオはそう言うと、蟻の門渡を軽く撫でた。ぞわぞわとした、むず痒い快感がマサトを襲う。その手はそのままいきり立った陽根に達し、ゆっくり扱き始めた。マサトがその快感に気を取られている内に、フィリオが指を一気に推し進める。

「んああっ!」

マサトが反射的に下腹部に力を込めた。その結果、括約筋が指をきゅっと締めることになり、新たな感覚がマサトに跳ね返ってきた。その感覚は、紛れも無い快感。

(俺、お尻で感じちゃってる!?)

マサトは、その事実に少し困惑した。その表情を見ていたフィリオが言った。

「ふふふ。やっぱりマサトは感じやすいんだね。気持ちいいんでしょ? ここ?」

その問いに、顔を横に向けることで答える。フィリオの言うとおりだが、素直に認めるのは悔しい。その考えを打ち崩すかのように、フィリオが二本の指を交互に抜き差しする。

――クチュ クチュ クチュ

マサトの孔は、二本の指を楽々と飲み込めるようになっていた。熱くなったリングが、快感を伝えてくる。それでもマサトは、拳を握ってその攻めに耐えていた。

しかし、フィリオが指を曲げたことで、その城壁はあっさりと崩れ去ることになる。

――コリッ

「あうっ! あああっ! フィル!? なにこれ!?」

「うわぁ……やっぱり、ホントだったんだぁ。おちんちんの裏側、気持ち良いでしょ? ほら! ほら!」

フィリオが胡桃大の前立腺を押す度に、マサトの口から息が洩れる。

「んっ! んっ! んあっ! やめっ!」

「マサト、やらしい声が出てるよ? おちんちんもこんなに涎たらしちゃって……」

指の動きに合わせるように、硬直の先端から透明な体液がぴゅるぴゅると吹き出す。マサトは軽く射精しているような快感にとらわれ、全てを委ねてしまおうかという考えが頭をよぎる。しかし、寸での所で思い止まった。まだ、早い。

――ズズッ! ズズズッ!

溶け出したアイスキャンディーのように、べちょべちょになったマサトの雄の先端に、フィリオが口をつけ、大きな音を立てながら快感の証を啜る。

「しょっぱくて、ぬるぬるして、凄く美味しいよ……。やっぱり、マサトの料理の腕は最高だね。もっとちょうだい……」

――グチョッ! グチョッ! グチョッ!

先ほどより、激しくフィリオの指が菊を責める。そのたびにマサトは小さな嬌声を上げた。まだ何とか耐えているが、だんだんどうでも良くなってきた。その感情の変遷を表すかのように、マサトの孔が、二本の指では物足りないと口を開ける。

「ぷはぁ……。僕だけが食べちゃずるいよね。マサトのココももっと欲しそうだから、もう一本あげるね? いや、もう二本食べれるかな?」

フィリオがもう片方の手をマサトの股間に持って行き、既に二本の指を咥え込んでいる窄まりに当てる。

「ふぇ?」

仰向けで控えめに喘いでいたマサトが、少し身を起こして親友の顔を覗く。その親友の顔は、とても楽しそうだった。フィリオの手にぐっと力が入る。

「フィ、フィル! ちょっとまっ! ぐはぁ!」

体が引き裂かれるような痛みが襲い、尻尾に力が入る。マサトのソコはすっかり柔軟性をなくし、張り詰めた円環を作った。腕を精一杯突っ張り、体を押し上げてフィリオの指から逃れようとした。

「もっと力、抜いてよ。ほら、息を吐いて」

「そっ、そんなこと言っても……。いきなりそれはキツイよぉ」

「すけべなマサトなら、これくらい大丈夫だって。ほら、おちんちん、もっと舐めてあげるから」

暖かい粘膜に包まれた雄根が快感を伝えてくる。マサトは出来るだけその快感に神経を向け、ゆっくりと息を吐いた。下半身が徐々に弛緩し、ずぶずぶとフィリオの指を飲み込んで行く。

「はぁ、はぁ、はぁ……キツイ……」

孔が思い切り拡張されるその感覚に、マサトの息が短くなる。

「くはぁっ!」

せっかく受け入れた指が、一気に引き抜かれた。まるで排泄したかの様な強烈な開放感がマサトを包む。

「もう一回、行くよ?」

再び指が押し当てられた。今度はあらかじめ力を抜き、受け入れの準備をする。

――ズブ! ズズズズッ! ニュポッ!

「んあっ!」

押し込まれると、直ぐに指が抜かれる。そして、休む間も無く、再度差し込まれる指。その度にマサトは息を吐いて四本の指を飲み込んだ。何度も繰り返すうち、さほど苦労することなく受け入れることが出来るようになってくる。

――ニュポン

引き抜かれた指とマサトの菊門の間に、粘液の糸が張る。その粘液は、少し黄色味を帯びていた。だんだん腸液が混じってきたようだ。すっかり解され、柔らかくなったソコは、時折おねだりするかのように、くぱっと口を開ける。濡れてぐちょぐちょになった毛が、欲望を誘う。親友の痴態を、フィリオが興味深そうに見つめていた。

「へぇ……凄いよ、マサトのここ。とってもやらしい……」

「はぁ……はぁ……はぁ……」

既にマサトは、肛門に与えられる快楽に陥落しまったようだ。目はとろんと蕩け切り、口からはだらしなく涎をたらしている。フィリオの声も、ぼんやりとしか聞こえていないだろう。

「……もう……いいのか?」

快感が途切れたことが気になったのか、マサトがだるそうに体を起こす。言葉にはしていないが、まだ満足していないことが声色に表れている。普段のマサトからは想像も出来ない、艶かしい声である。

フィリオが手の平で窄まりの周囲を優しくマッサージしながら、そっと口付けをする。そして、マサトに負けないくらい、艶のある声で語りかける。

「そんな訳ないじゃない。マサトがこんなにいやらしいんだもん。えっちな僕が、ここで止めるわけ無いでしょ……。さっ、一緒になろうね、マサト」

フィリオがマサトの足を大きく広げ、覆いかぶさる。そして、すっかり硬さを取り戻した自らの剛棒を受け入れ体制の整った、その孔に当てる。

「フィルの……熱い……」

自分を熱い目で見下ろす、フィリオの瞳を見つめた。その顔が合図をするように動き、尻穴に当てられた焼きゴテに力が入れられる。

「ちょっと……待って、フィル……。入れる前に、俺の手、握って」

「……怖いの?」

「うん……ちょっとだけ。俺、フィルのもらったら、変になっちゃいそうだから……」

フィリオがマサトの手を取り、しっかりと指を絡ませる。

「大好きだよ、マサト……」

「俺も大好き……。さあ……来て、フィル……」

フィリオがゆっくりと腰を突き出す。すっかり解されたマサトの孔だったが、それでもその大きな怒棒はキツイ。マサトは親友の手を握り締め、はあっと息を大きく吐いて、括約筋を緩める。

――ズズッ!

「入って……来た……」

努力のかいあって、徐々に硬直が奥へと進み始める。マサトの孔は既に今までにないほど広がり、ミチミチという音が聞こえてきそうだ。それでもマサトは、不思議と痛みを感じていなかった。感じるのは、親友を中に迎え入れられるという喜びのみ。

「くはぁっ! ふぅ……ふぅ……」

「マサト……先っちょが入ったよ……。もうちょっとだから、頑張って……」

フィリオが勇気付けるように、自らの尻尾をマサトの尻尾に絡ませる。

「俺は……大丈夫だから……。早く……」

もっともっと、愛情が欲しい。フィリオはこくりと頷き、さらに腰を押し出す。だんだん加減が分かってきたのか、肉環が飲み込むスピードを速める。

――ズブッ!

「くふぅっ!」

マサトは肺の空気を全て吐き出す。フィリオが力を込めて腰を突き出したとき、遂に大きな大きな熱棒が全てマサトの胎内収まった。

「全部……入ったよ……マサト。マサトのお腹の中……すっごくあったかい……。それに、とってもキツイ……。僕のをキュンキュン締め付けてくるよ……」

「はっ、はっ、フィルの、凄いっ! 俺、すっごい嬉しいよぉ……」

マサトは親友の硬直を全部受け入れることが出来たことに、感激の声を上げた。そして、体内にトクントクンというフィリオの鼓動を感じ、歓喜の涙を流す。

「俺の中で、フィルのがドクドクいってる! 熱くて、おっきくて、幸せだよぉ!」

マサトが手を大きく広げ、フィリオを求める。

「なあ、キスして! フィル! フィルぅ!」

「マサト、好きだよ!」

フィリオが口にむしゃぶりついた。両手は互いの翼や尻尾を弄り、性感帯を貪り尽くす。マサトの孔は、いつの間にかすっかりフィリオの剛直に馴染み、うねうねと蠕動運動を繰り返す。

「はぁ……はぁ……動くよ、マサト」

マサトの体が、より強い刺激を欲しているのを感じたのか、腰を動かし始める。最初はゆっくりと……。だがしかし、直ぐにその動きは激しさを増す。

――パンッ、パンッ! パンッ、パンッ!

「あっ! あっ! あっ! あっ!」

リズム良くマサトを突き上げるたびに、その口から喘ぎ声が洩れる。

「マサトッ! 可愛いっ!」

フィリオが指をマサトの口に差し出す。マサトはその指を愛おしそうにしゃぶった。マサトが少し落ち着いたときを狙って、腰で一突き。

――パンッ!

フィリオの睾丸がマサトの臀部を激しく打ち、大きな音を立てる。マサトは一際大きく鳴いた。

「ああああっ!」

フィリオは腰を大きく回して、容赦なく責める。腸内を深く抉られたマサトは、襲い来る快感に耐えかねたように、苦しそうな声を出す。

「くああっ! フィル、気持ち、良すぎっ! ああっ!」

――グチュッ! グチュッ! グチュッ!

フィリオの激しい動きに、結合部の体液が白く泡立つ。雄根が引き抜かれる度に、肉の輪がめくれ、熟れた果実のように真っ赤な粘膜を覗かせる。お尻が……熱い。大きな雄でソコを擦られると、熱くなった肛肉が鈍い快感を伝えてくる。

――パンッ、パンッ! パパンッ!

再び、鋭い突き。腸壁が激しく責め立てられ、脳幹に電撃が走る。頭が真っ白になり、もう何も考えられなくなる。びくんと尻尾が跳ねた。肉袋がきゅっと縮まり、マサトは自分が絶頂に近づいていることを知った。

「はううっ! 俺、もう、イッちゃいそう!」

「はっ! はっ! 駄目だよ! 初めてはっ、一緒でないとっ、僕、やなんだから!」

熱い吐息を漏らしながら、フィリオが指で輪っかを作り、竿の付け根をしっかりと締め付ける。

「くうっ! そんなぁ……」

達することが出来なくなったマサトは、情けない声を出す。

――ジュブッ! ジュブッ! ジュブッ!

そんなマサトを気にすることなく、フィリオは更なる快楽を求めて、何度も何度も孔を犯す。その度にマサトは絶頂寸前まで追いやられるが、お許しが出るまで頂に達することは出来ない。

その過酷すぎる攻めに、マサトは懇願する。

「フィルぅ! お願い! もうイかせて! ヘンになっちゃうよぉ!」

「もう……ちょっとだから! もうちょっとで、僕もイきそうだから、あとちょっとだけ辛抱して!」

そういうと、フィリオが一気に腰の動きを加速させる。

――パンッパンッパンッ! パンッパンッパンッ!

「あっ! あっ! あっ! あっ! ああああああっ! 早くぅっ!」

マサトが甲高い嬌声を上げた。ほとんど悲鳴に近い。

「うううっ! 来たっ! イッちゃう! 僕、イッちゃうよぉ! マサトも来て! 一緒にイクんだから! 一緒に! ああっ! マサトっ! 好き! 好きぃっ!」

フィリオが戒めを解いた。

「ああっ! フィル! フィルぅぅぅっ!」

――ドクッ! ドク、ドク、ドクッ!

――ビュッ! ビュル、ビュルルルルルッ!

胎内に白い溶岩が注ぎ込まれたその時、マサトの雄も熱いミルクを吹き出していた。二回目だというのに、凄い量だ。とたんに、二人のお腹の毛皮が白濁液でぐしょぐしょになる。フィリオはフィリオで、その巨艦に相応しい子種を放出する。マサトのお腹があっという間に、フィリオの精液でいっぱいになった。

「はぁ、はぁ、はぁ……。ごめん、マサト……。中に出しちゃった……」

フィリオがゆっくりと、中に押し込んだ雄棒を引き抜こうとする。

「待って! フィル!」

訴えかけるような声に、フィリオは動きを止める。

「……もうちょっと……フィルを感じたい……」

「……マサトったら……ホントに可愛いんだから……」

恥ずかしそうするマサトに、フィリオが軽くキスをした。

「それに……今抜かれたら……出ちゃう……」

消え入りそうな声で、マサトがつぶやいた。その言葉に、一瞬動きを止めるフィリオ。直後、悪戯を考え付いたときによく見せる、心底楽しそうな笑みを浮かべた。悪い予感がする……

「ちょっ、待っ! ひあっ!」

――ジュポ! ブリュッ! ブリュリュリュッ! ブジュ!

訴え空しく、フィリオの竿が一気に引き抜かれる。精を吐き出して、敏感になった体に、鋭い快感が走る。そして、塞ぐものがなくなりぽっかりと口を開けた恥孔から、腸液と精液が交じりあって、黄色味がかった白濁液が噴出し、シーツを汚す。

「ううっ……酷いよ……フィル……」

「やらしい……マサト……」

フィリオは、二人の体液が合わさった液体をなおも垂らすマサトの孔を、物珍しそうに眺めていた。

むせ返るような性臭の中、二人は向かい合うように横たわっていた。

「……ようやく……一緒になれたね、マサト」

「うん」

こくりと頷いたマサトの腹を、フィリオが撫でる。白い毛皮がべっとりと濡れている。しっかり洗わないと、取れないだろう。

「どうだった?」

「……幸せだった。すっごく……。気持ちよすぎて、死ぬかと思った」

そして、ずっと気になっていたことを聞く。

「そういえば、ずっと知ってたのか? 俺がお前のこと好きだったの」

フィリオがくすくすと笑い声を上げる。

「あったり前じゃない。真夜中に僕の名前をあんなに呼ばれたら……ね?」

「……だよな。でも、なんでもっと早く言ってくれなかったんだ? お前、ワザと俺を誘うようなことやってただろ?」

「それはお互い様でしょ? それに……僕は告白される方があってるしね」

今度はマサトが笑う番だ。

「ふははっ、でも結局、俺が先に告白されちゃったよな? あのときのフィルの焦った姿、可愛かったぜ。お前でもあんなに慌てることってあるんだな」

「マサトに言われたくないよ! いっつも慌ててる癖に!」

膨れるフィリオの頬を、指で突く。

「ありがとな、フィル。慌ててくれて。そんなに俺のこと、想ってくれてるんだって分かって、すっごく嬉しかった……」

「……マサトもありがと。でも、皆の前でキスするのはもう止めてよ。あれ、結構恥ずかしかったんだから」

「うん」

マサトがもぞもぞと動く。どうも、激しく責め立てられた局部が気になるようだ。

「お尻、大丈夫?」

「……多分。まだなんか入ってるみたいに感じるだけ」

「痛くなかった?」

「……ちょっと痛かった。ほんのちょっとだけだけど。……今度は、逆だぞ?」

その提案に、フィリオは頭を横に振る。

「だーめ。それはマサト次第だよ。ホントは今日も僕に入ろうと考えてたんでしょ? まあ、マサトの考えることなんて、お見通しだったけどね。準備不足なんだよ、マサトは。基本的に単純だし……。まあ、そんなとこが可愛いんだけど」

そんなことの準備に時間をかけるのもどうかと思ったが、犯られてしまったのは事実だ。マサトはムスッとした顔をして黙り込む。

「可愛いって言われるの、嫌なんでしょ?」

「だって、可愛いのはフィルだから……。それに、本当はもっと俺がしっかりとお前をリードしてやりたかったのに……」

フィリオが、マサトの足に尻尾を絡ませてくる。

「マサトは無理しなくていいの。もっと僕を頼ってくれていいんだから。もちろん、マサトにも色々とお願いするけどね!」

親友の優しい瞳を見ていると、今日のことは譲歩してやろうという気になってくる。まあ、マサトが譲らないことは皆無に等しいのだが……。

二人が行為の後の余韻を楽しんでいると、フィリオが大あくびをする。

「ふあぁぁ。僕、疲れちゃった」

マサトは一瞬、体を清めてからとも思ったが、この時間を壊したくない。

「そうだな。もう寝るか?」

「うん。お休み、マサト」

フィリオがマサトの体にぴったりと寄り添う。マサトは幸せに包まれ、目を閉じた。

――ドン、ドン、ドンッ! ドン、ドン、ドンッ!

騒々しいドアの音に、マサトはたたき起こされる。頬を叩いて意識を覚醒させると、隣でぐっすりと寝ているフィリオが目に入る。

「……そういや……そうだったな」

昨晩のことが頭に浮かび、気恥ずかしさを感じる。体中に掛かった体液はすっかり乾き、二人の毛にこびり付いている。しかし、散々嬲られた孔にはまだぬるぬるが残っていて、気持ちが悪い。早くお風呂で綺麗にしたい……

――ドン、ドン、ドンッ! マサトー! いないのかー?

ドアから聴こえてくる声に、はっとする。大変だ。このまま外に出るのは、非常にまずい。慌てて、いまだ寝息を立てる親友を揺する。こんなに騒がしいのに、身動きしないフィリオは流石である。

「むにゃ……マサト、もう朝なの?」

眠そうに目を擦るフィリオ。

「大変なんだ! 今日、リズ達と約束してたのすっかり忘れてた!」

マサトが指差す目覚まし時計は、既に十一時を回っている。みんなで、ランチを食べて、映画を見に行く約束をしていたのだ。

「うーん……そういえば、そうだったね。じゃあ、あの五月蝿いのリズ君かな?」

せっかく迎えに来たというのに、厄介者扱いされるリズが少し可哀想になる。これも日頃の行いの結果だ。

「どうしよう?」

「もうちょっと寝たいから、今日は止めとこっか? 映画は明日でも見に行けるんだし、今日はゆっくりしようよ」

「ちょっと悪い気もするけど……」

「大丈夫。リズ君相手なら、何とでもなるよ!」

吹っ切れないマサトを尻目に、もうすっかりその気になったフィリオが玄関へと向かう。

「ちょっと待て、フィル! 流石に裸はまずいだろ!」

「……そうだね。じゃあ、これでいいや」

フィリオがシーツを剥ぎ取って体に巻きつけ、そのまま部屋の外へ出て行く。もちろん、そのシーツは、昨晩マサト達の下に敷かれていたものだ。まだ、若干湿っていたようだったが……。

「フィル!」

マサトが引きとめようとしたとき、既にフィリオの姿は扉の向こうに消えていた。

目の前の扉が、ようやく開く。

「おい! 遅いぞ! マサト?」

怒鳴ろうとしたリズの前には、裸同然のフィリオの姿。大きなシミが広がったシーツを、引き摺っている。

「……フィリオ……か? ……どうしたんだ?」

リズの鼻が、青臭い匂いを嗅ぎ取る。自分を慰めたときに良く嗅ぐ、あの匂いだ。

「まさか、お前達……」

衝撃を受けた様子のリズを見て、ようやくフィリオは自分の姿に目をやる。既にもう遅い。むしろ、気付かずにここまでやってきたことが、奇跡だ。時折、フィリオは信じられないミスをする。

「これは、いや……。リズ君、このことは黙っててね。もし、誰かに言ったら、一生許さないから。分かってるよね? リズ君も皆に知られたくないこと、色々あるでしょ?」

フィリオが低い声を出す。言い訳するのを諦め、リズを脅すことにしたようだ。自分が起こしたトラブルの処理を、何度も助けて貰っているため、リズには思い当たる事が山のようにある。

「……分かった」

リズは一言そう答えると、直ぐに振り返って階段へ向かった。リズがこんなにも簡単に引き下がるのは、非常に珍しい。フィリオに脅されたということも少しはあるが、それ以上に先ほど見た光景がショックだったのだ。

あのマサトが、ついにフィリオと関係を持ってしまった。先日の一件以来、こうなることは分かってはいたが、目の前で生々しい現実を見せ付けられると、やはり辛い。仲の良い二人を応援したい気持ちもあるが、どこか割り切れない自分がいる。

リズは柄にも無く色々と悩みながら、とぼとぼと階段を下りていった。何時もは元気に飛び跳ねている尻尾が、今日は寂しげに垂れ下がっていた。

つづく

登場人物 =とじる=

空木雅人(ウツギ マサト)

スカイ・ドラゴンの♂16歳。フィリオの為なら、たとえ火の中、水の中。いつかは親友をリードしたいと思っているが、一体その日は来るのだろうか……

フィリオ=ユーレ

エア・ドラゴンの♂16歳。どんなことでも、事前準備は欠かさない!?ベッドの上でも、リーダとしての威厳は健在なのか?

リズ=オルシーニ

ラビットの♂16歳。今回、最大の犠牲者。彼が報われる日はそう遠くないハズ!?

結城悟(ユウキ サトル)

ラビットの♂16歳。徐々に扱いが酷くなってきたような気も……。本当は真面目で純粋な良い仔なんです。

バク

3歳のAI。最近の急成長株。周りのお兄ちゃん達の影響で、どんどん良くない方向に……。彼の今後が楽しみです。