世界が飛翔する刻

第二章 自己認識の核(コア)

2010/4/23

休日、いつもの四人とバクでウィンドボールを楽しんでいると突然バクの生体端末が動かなくなってしまう。どうやらこのところ生体端末が制御不能になる事が多いらしい。フィリオはバクがちゃんと遊んでいないからだという持論を展開し、誘拐しようと言い出す。マサトは反対する間もなく誘拐計画に参加することに……

~2070年1月~

遮光フィルタを通った白い光が、二本の水晶に反射する。キラキラと輝く透明の角。その持ち主が華麗に体を翻し、追っ手をかわす。尻尾を大きく振った反動を使い、スカイ・ドラゴンがなおも追いすがって来る。バクは落ち着いてその姿を確認した後、四つの翼を強くはためかせ急上昇。ぽんとマサトの頭を蹴って、シュート。ボールは吸い込まれるようにゴールに収まった。

「ああっ! マサト、しっかりしろよ!」

宙に静止したまま、額に手を当てて悪態を付くリズをぎろりと睨む。

「お前がそうなったからだろ! あれだけ、バクには気をつけろって言ったのに、考えずに動くから。さあ、早く降りて来いよ。リズ」

マサトは空中でもがく友人を見て、苦笑いを浮かべた。必死に腕を動かして、何とか壁面に近づこうとしているが、全く効を奏していない。マサト達五人が興じていたのは、無重力空間で行われるウィンドボールと呼ばれる競技である。地上では運動が得意なマサトとリズがペアを組んだのだが、巨大なハイブリッド・コンピュータでもあるAI、バクには歯が立たなかったようだ。試合はバクの独り舞台で、同じチームのフィリオやサトルも一応動きはしたが、せいぜいかく乱する程度の成果しか上げていない。

今日の主役はなんと言ってもバクである。無重力で行われるこの競技のポイントは〝いかに軌道をよんで体を制御するか〟である。無重力空間では、一度壁から離れると方向転換が容易ではない。飛び出す前にまず予測。それが重要なのだ。身体能力に優れるマサト達は感覚でそれを掴んでいたのだが、計算しつくされたバクの動きにはとても追従できなかった。見事な手際でリズが宙で動きを止められてしまうと、もう勝負にならなかった。何も手がかりが無い状況では、自分の力で動き出すことは不可能に近い。無害化されたリズは、ただ罵声を浴びせるだけの無意味な浮遊物となり、一対三の一方的な試合が展開された。

「いてっ! 何するんだよ!」

諸悪の根源に、力の限りボールをぶつける。その反動で少し体が動き出したが、まだまだ壁は遠い。

「バク、行けっ!」

マサトが番犬をけしかけるかのように手を振ると、満面の笑みを浮かべた少年が、壁面を蹴って弾丸のように飛び出す。鋭い角が生えた頭頂部を目標に向けて。

「お、おいっ!」

迫りくる先端に、恐怖の叫び声を上げるリズ。何とか逃げようとするが、腕がむなしく宙を切るのみである。バクのあまりのスピードに、命令を出した張本人であるマサトも少々焦る。

硬い水晶の塊が、哀れな犠牲者に突き刺さろうかとしたそのとき、バクが大きく翼を広げ体を180度回転させる。

――ドスッ!

鈍い音とともに、バクはリズの腹に着地する。すばやく服の裾をつかみ、その体とともに壁へと向かう。

「ぐえっ!」

リズが洩らした奇妙な声に、フィリオが喝采を浴びせる。笑われた当の本人は、首筋の毛を逆立ててバクを掴んだ。 

「何すんだよ! 危ないだろ!」

本気で怖かったのだろうか、その目にはうっすらと涙が浮かんでいる。

「へへっ、怖かった?」

「当たり前だろ! もし刺さったらどうしてくれんだよ!」

バクの角を掴み、乱暴に頭を揺さぶる。角の持ち主はへらへらとした笑みを浮かべ、

されるがままになっている。仲の良い友達との馬鹿騒ぎを楽しむその表情は、まさに本物の子供そのものだ。

昨年末に初めて出会い、一緒に遊ぶようになってからというもの、感情表現が豊かになってきたようにマサトは思う。初めて出会ったときから既に、AIというイメージからかけ離れた人間らしさを持っていたのだが、そこにはやはりぎこちなさがあった。マサト達と出会う前は、生みの親であるリョウコ、ハヤトとその同僚であるほむらの職員としかコミュニケーションをとる機会が無かったのだ。人間で言えば、まだ家族に守られている状態。初めての〝他人〟ともいえる、マサト達との関係が多少不自然になるのも当たり前だ。しかし、そのぎこちなさも今となっては完全になくなり、少しは遠慮して欲しいと思うほどに親密になってきた。

その一方でマサト達も、当初は自分達が到底及ばない膨大な知識を持つAIを相手にしているということで、多少の恐れや畏怖もあったが、今現在はそういった感情は皆無である。付き合ってみると、人間となんら変わらない。むしろ、学習が早い分、付き合いやすいほどだ。

「リズ兄ちゃん、僕はそんなミスしないよ! ちょっと驚かせようと思っただけだって」

親友の言葉遣いにそっくりなその発言を聞いて、マサトは苦笑した。バクは最近、マサト達のグループで最高権力を握っているフィリオの真似をすることが多くなってきた。心なしか、自分とリズに対する扱いが乱暴になってきたような気もする。成長するのは良い事だが、今は恋人でもあるフィリオのように強気な性格になられては、自分の立場がますます危うくなる。

「ちょっとは人生の先輩に対する尊敬の念をだな……バク?」

珍しく説教しようとしたリズが、不自然に言葉を切った。熱を測るかのようにバクの額に手を当てている。違和感を覚えたマサトはすっと二人に近寄る。

「どうした?」

「いや、なんか突然……」

リズに抱えられたバクを見ると、目を見開いたままうつろな表情をしている。糸の切れた操り人形のようなその姿に、マサトはぞっとする。

「バク君! 大丈夫!」

少し遅れて来たサトルが悲鳴を上げる。マサト達四人の中で、最も仲が良いのはサトルである。出合った直後から二人で良く遊んでいるようで、バクのことをいつも弟のように可愛がっていたのだ。突然こんな様子を見てよほどショックなのだろう、リズからバクを奪い取り、長い耳を胸に当てて無事を確かめている。

「サトル君、落ち着いて。脈と呼吸は大丈夫みたいだから。マサト、リョウコさんに連絡して」

マサトは慌ててPDAを取り出し、リョウコに緊急メッセージを送付する。フィリオは倉庫でマサトと一緒に閉じ込められる事故にあって以降、応急処置に関する勉強をしていたようなのだ。その素早い対応も、その賜物といえる。もう二度とあんな目に会うのはごめんだが、良い経験にはなった。

「俺、なんか悪いことしたのかな……」

リズが不安な声を漏らしたとき、四人のコンタクトに音声通信要求を示すアイコンが現れる。要求元は〝ほむら環境管理AI・バク〟。マサトはPDAの音声出力を外部スピーカーに切り替え、通信を許可する。

〈えへへ、ごめんなさい。ちょっと調子悪くなっちゃった〉

マサト達の心配をよそに、スピーカーからは暢気な声が聞こえてくる。バクの本体はあくまでもほむらの中央コンピュータなのである。とはいえ、あのような姿を突然見せられて、驚かない訳がない。

「……バク君、大丈夫なの?」

〈うん。大丈夫だよ、サトル兄ちゃん。心配かけてごめんなさい〉

その言葉に、少しほっとした表情を浮かべるサトル。しかし、完全に不安が無くなったようではなさそうである。

「でも、突然どうしたの? 調子悪いってどういうこと?」

〈あのね、ちょっと端末との通信が出来なくなっちゃって……。もしかしたら、ほむらの送信機の調子が悪いのかも……〉

端末とは、バクの生体端末――つまり体のことである。以前、リョウコに聞いたところ、生体端末にもバクの意識を保てるくらいの処理能力はあるようなのだが、色々と制約が増えるため、ほとんどの場合ほむらのハイブリッド・コンピュータを拠点にしているらしいのだ。そのため、通信が切れると生体端末とバクの意識は切り離されてしまうのだろう。

しかし、サトルはその回答に釈然としない表情を浮かべる。マサトも同感だ。ほむらの通信設備が不調を起こすことなど考えにくい。ましてその言葉が、コントロールする立場にあるAIから出るとは思えない。とはいえ本人がそういっている以上、何か話せない事情があるのだろう。

〈でね、お兄ちゃんたちにちょっとだけお願いがあるんだけど、いい?〉

「……いいけど、どうしたの?」

少し間をおいたサトルが、首を傾げる。

〈あのね、僕の端末をお母さんのところへ運んで欲しいの。今のままだと、コントロールできないみたいだから〉

通信障害であれば、時間が経過するか場所を変えれば直ぐに回復するはずである。それをリョウコのところまで連れて行けと頼むということは、一時的な不具合ではないということを意味している。マサトは疑問に思いつつも、言葉を飲み込む。

「うん。分かった。みんな、手伝ってくれるよね?」

サトルがぐったりしたバクの体を抱え上げながら、小さな声で問いかける。マサト達は無言で頷き、リョウコのラボへと向かった。

リンク・ステーションでは既にリョウコが待っていた。

「あっ! みんな! ごめんなさいね、バクが迷惑を掛けちゃって」

サトルからその体を受け取り、顔をそっと撫でる。その表情は硬い。マサトの印象では、リョウコはいつでも自信に満ち溢れていたように思えるのだが、今はやり手の女性エンジニアの姿は陰を潜めている。まるで重病のわが子を心配する母親のようだ。

リョウコのラボは無重力エリアの中央計算機ブロックに位置している。ラボへ向かうまでの通路は、剥き出しの配管に囲まれ、ポンプが立てる重低音が響いている。リョウコの話によると、場当たり的に計算機を増やした結果、排熱が間に合わなくなり、このような不恰好な対策をする羽目になったらしい。

太いパイプが入り込んでいる部屋に近づいたとき、扉がすっと開いた。リョウコが手招きし、マサト達を迎え入れる。サトルは何度か来ていたらしいが、マサトがこのラボに入るのは初めてだ。

「ちょっとここで待っててくれる? ここから先は関係者以外立ち入り禁止なの。この子を休ませたら直ぐ戻ってくるから」

バクの体を抱えたリョウコが、通路の奥へ消える。通路の壁面には、申し訳程度の〝立ち入り禁止〟の文字。言われなければ気付かないだろう。

「どうしたんだろうね、バク君」

フィリオが当然の疑問を口にする。

「突然だったよな。リョウコさんも心配そうだったし……」

自分の尻尾よりも太いパイプを触りながら、マサトもつぶやく。配管からはわずかな振動。何かの液体が流れているようだ。おそらく、排熱用のヒートパイプなのだろう。バクの意識を形作るハイブリッド・コンピュータを冷却しているのかもしれない。

「……熱、とかかな?」

「でも、俺が触ったときは熱くなってなかったぜ」

マサトの思い付きを、リズが否定する。

「そっか。なんとも無けりゃいいんだけどな」

リョウコが戻るまでの間、四人は言葉を発することなくただただ待っていた。

「ごめん。待たせちゃって」

疲れた表情のリョウコが立ち入り禁止区域から現れる。手には、ルビー色の液体が入ったチューブ。

「はい。こんなところだから、お菓子は出せないけど。一応、葉っぱから淹れてるのよ」

受け取ったチューブはほんのりと暖かい。コックを捻り、中を啜る。レモンティーのようだ。甘みは控えめだが、いい香りがする。

「ふぅ。驚いたでしょ?」

「ええ、まあ……。バク君に何か、あったんですか?」

サトルが、ホットティーが入ったチューブを両手で揉みながら問う。

「最近ね、たまにこういうことがあるの。生体端末に異常は無いし、ハイブリッド・コンピュータとの通信にも問題ないんだけど、突然端末のコントロールが出来なくなるらしいのよ。少し休ませてやれば回復するみたいなんだけど、バク自身も原因が何か分からないみたいなの。私も色々調べてみたけど、解決方法が見つからなくてね……」

リョウコの話によると、マサト達がほむらに到着した当日もこのようなことが起こったらしい。四人の担当教官であるハヤトが呼び出されたのも、それが理由だったようだ。ただ、端末との通信が上手く行かないだけで、バクの意識活動に問題は無い。現にこうしている今も、ほむらの空調管理システムをメンテナンスしているようだ。

「あの……バク君ってお休みしないでも大丈夫なんですか?」

フィリオが少し気の抜けた調子で聞いた。マサトやリズが同じ質問をすると、まるでリョウコがバクを休ませていないと捉えられかねないが、その点フィリオなら大丈夫だ。言い方一つで、言葉の意味は反転する。

「いいえ。バクも毎日寝ているわよ。もちろん、私達の睡眠とは少し違うけどね。ずっと活動していると、AIでも疲れが溜まってくるの。ちゃんと理解するには有機コンピュータ・ネットワークの知識がいるんだけど……。そうね、普通のコンピュータで例えると、ずっと使い続けているキャッシュメモリにごみが溜まってしまうってイメージかしら? たまにはメモリを掃除しないと、動作が遅くなってしまうでしょ? それと同じで、溜まったごみを綺麗にするためにバクも睡眠が必要なの。これは有機コンピュータを使ってるバクの特徴なんだけどね。中には、休まなくても平気なAIもいるわ」

言葉を切り、流れ出した漆黒の髪をピンで留める。

「でも、バクはちゃんと休まないと駄目。あの子、頑張り屋だから、なかなか休もうとしないの。こんなことが起きるようになってから、特にね。最近は私がしつこく言うものだから、少しは休んでくれるようにはなってきたんだけど……。ほむらの管理を任せ始めたのが悪かったかったのかしら?」

リョウコが大きくため息をつく。バクだけではなく、母親代わりの女性も、この事態にかなり参っているようだ。フィリオとの一件で色々とお世話になっている以上、マサトも何か役に立てることが出来ればと思う。何より、当のバクは自分達の大切な友達なのだ。しかし専門家であるリョウコにも原因が掴めていない以上、素人の自分達に何が出来るのか検討もつかない。

一行は煮え切らない思いで通路を戻っていた。重い空気にマサトが耐えられなくなって来たとき、先頭を行くフィリオがくるりと方向転換した。長い毛がふわりと広がり、宙に舞う。

「どうしたんだろうね、バク君」

後ろを向いたままのフィリオが、慣性で後退してゆく。無重力環境だからこそ出来る動きではあるが……

「後ろ!」

――ガッ!

マサトの警告空しく、フィリオが後頭部を強打する。縦に回転し始めた体を、尻尾を掴んで止めてやる。

「いったーっ! マサト、言うの遅い! もう、放してよ!」

フィリオが尻尾を振って自分を掴む腕を振り払おうとするが、マサトの方も上手く体を動かしてその動きに抵抗する。その姿はまるで、格闘の末捕まえた大魚を持つ釣り人のようだ。その様子を見ていたリズやサトルの表情も自然と綻ぶ。

「後で覚えていてよ、マサト」

何時もの台詞が聞けたところで、手を放す。最近、この程度であれば、それほど酷い扱いはされないことが分かってきた。長年一緒に暮らしてきたとはいえ、関係が変わればまだ新しい発見もあるようだ。

開放されたフィリオが器用に体勢を立て直す。二ヶ月も経つと、無重力環境にも慣れる。

「マサト君、後で謝っといたほうがいいんじゃない? で、バク君の話なんだけど……」

ひとしきり笑った後、サトルが口を開く。

「僕達にも何か出来ないかな?」

「確かに何かしてやりたいけど、その〝何か〟が分かんないんだよなぁ……」

珍しく悩み始めるリズを、フィリオが一蹴する。

「あのさ、僕思うんだけど、みんな考えすぎなんだよ。特にリズ君。君が何か考えたところで、何も思い浮かぶ訳無いよ」

「ったく、フィリオだってロクなこと思いつかないだろ! いっつもマサトに助けられてばっかりじゃん。前のテスト、俺の方が成績よかっただろ!」

「そんなの、どうせただヤマ勘が当たっただけでしょ。あのね、僕はあんまり考えすぎても疲れるだけだって言ってるの。きっと、バク君も考えすぎなんだって」

「じゃあ、どうすればいいんだよ」

少しふてくされたのか、ぶっきらぼうな聞き方をするリズ。最近、フィリオにやたらと絡むようになってきたのは、マサトの気のせいなのだろうか?

その問いに対して、待ってましたとばかりにフィリオが胸を張る。

「考えすぎなんだから、思いっきり遊べばいいんだよ」

「なんだよ、それ。今日も遊んだじゃん」

「あれじゃ、不十分なの。もっと真剣に遊ばないといけないと思うんだ」

フィリオの意見に、リズだけではなくサトルやマサトも首を傾げる。誰も自分の考えを理解していないことに、気を良くしたのかそのまま演説を繰り広げる。

「バク君って、いつでもほむらのこと気にしてるでしょ? 多分、僕らと遊んでるときも、そっちの方が気になって、遊ぶことに集中できてないような気がするんだ。だから……」

ゆっくりと皆を見回す。十分に溜めを作ったあと、にやりとして一言。

「今度バク君を誘拐しない?」

「はっ?」

マサトの返事が皆の意見を集約していた。何故突然〝誘拐〟という物騒な言葉が出てくるのか、全くもって理解できない。

「だから、バク君を誘拐して、監禁した上で遊ぶんだよ。どう? 面白そうじゃない? 一度やってみたかったんだ。誘拐って」

遠くを見つめる親友を見て、何故そんなことを言い出したのかようやく検討がついた。おそらく、昨晩見た映画に影響されたのだろう。誘拐犯とそれを追う刑事を描いたサスペンス映画で、話題にはなったもののマサトとしてはそれほど面白くは感じなかったのだが、フィリオは割りと気に入ったらしい。

「誘拐……か。確かに面白そうだな。いいぜ、フィリオ。乗った!」

「おい、リズ。お前もかよ。大体さぁ、バクの意識はほむらのコンピュータの中にあるんだろ? バクの体だけ誘拐しても意味あるのか? それに、そんなことしたら、リョウコさん達に迷惑だろ」

「ホント分ってないなぁ、マサトは。遊ぶのに大事なのは頭じゃなくて体じゃない? 頭だけだと、みんなと一緒に遊べないでしょ? それに、体を動かさないと頭もスッキリしないよ。AIでもきっと同じだって!」

「そうかなぁ……」

しかしその説明では、誘拐が一体どう問題の解決に繋がるか全く解らない。おそらく、本人もそんなことは露ほども考えていないのだろう。どうも、単に面白そうだからやってみたいという思惑が見え隠れしているように感じる。一方リズの方はというと、こちらもやはり考えてはいないだろう。結局どちらも、変わった事をして遊びたいだけなのだ。マサトはゆっくりとサトルの方を見る。おそらく、自分と同意見なのは、このラビット種の少年だけだろう。

「そうだよ! ね、サトル君も賛成だよね?」

唯一の賛同者に魔の手が迫る。

「えっ! 僕は、そんな……」

「心配しなくても大丈夫だよ。サトル君なら、いい演技できると思うよ!」

親友の強引な発言に、呆気に取られるマサト。こうなってしまってはもう誰もフィリオを止められない。

その後二人の努力も空しく、どんどんと話が進んで行った。いつも通りの手際の良さで、計画の日取りが決められる。どうやら、来週頭にバクを誘拐するらしい。もはや引くことは出来ないと半分諦めたマサトは、先導役に伺いを立てた。

「で、俺は何をすればいいんだ?」

「うーん、そうだね。マサトは本番に弱いから、どうやったら良いか計画立てといてよ。その方がいいでしょ?」

フィリオの言い草に少し腹が立ったが、そのような茶番に駆り出されなくて済むのなら、むしろ有難い。自分はゆっくりと遠くから傍観しようと心の中で思いながら頷く。

「うん。じゃ、計画よろしくね。明後日の午後にもう一回集まろうと思うから、それまでに考えてくれればいいよ」

相変わらずの要求に、ため息が出る。マサトが顔を上げると、親友の向こう側に障害物。

「後ろ!」

――ゴッ!

フィリオが振り返った瞬間、今度は顔面を強打する。見ているだけで痛そうだ。マサトは、一度痛い目にあったにもかかわらず、同じ体勢で同じことを繰り返す親友を、可愛らしいと思うと共に、少し情けなく思った。

「ほら、大丈夫か?」

顔を抑えて回るその体を、そっと止めてやる。横で見ていたリズなど、堪え様ともせずに、大爆笑している。額を覆う柔らかい毛をそっと押しのけ、手を触れると少し膨らんでいるようだ。

「帰ったら、冷やしてやるから。今度はちゃんと前向けよ?」

珍しく、素直に頷くフィリオ。小言の一つも言わないとは、二度も同じ失敗をしたことが余程恥ずかしかったらしい。

次の日の夜、マサトとサトルは公共図書館で会合を開いていた。議題はもちろん、バクの誘拐について。正直なところ、その計画には二人ともあまり乗り気ではなかったのだが、やると決めたからにはそれなりに頑張ろうということで事前に集まっているのだ。この二人はなんと言っても真面目なのである。

「わざわざ計画立てるなんて、なんか大ごとだね」

そう言ってアイスコーヒーを飲むサトル。マサトは、砂糖もミルクも入れない苦い液体を率先して飲む理由が、良く分からないといつも思う。

「ちゃんと考えとかないと、あいつら怒るだろ?」

「〝あいつら〟というより、〝フィリオ君が〟だよね? マサト君達って、すっごく仲良くってうらやましいな」

口元を押さえ、クスクスと笑う。これがリズであれば、すぐさま張り倒しているところだが、サトル相手ではそういう気になれない。

「まあ、いいだろ。そんなことは。それより、さっさと決めようぜ」

「うん」

「じゃあ、まずは、何処に連れて行くかだな。フィルが言うには、電波を遮れるところがいいとか言ってたけど……。電波遮っちゃったら、昨日みたいになるんだからあまり意味ないよな?」

その質問に、耳長の少年は黙り込む。不思議に思ったマサトが首を傾げる。

「どうかしたのか?」

「うん。えっとね、前にリョウコさんとこに遊びに行った時に、色々聞いたんだけどさ。バク君って、別に通信できなくてもあんな風に意識を失ったりしないんだって。体の処理能力だけでも、十分に意識は保てるらしいんだ。だから多分、電波を遮断しても大丈夫だと思うよ……」

言葉尻が聞き取りにくい。耳もぺたんと元気なく倒れている。やはり昨日の原因は、通信設備が問題だった訳ではないらしい。サトルはバクの言葉が嘘であることを分かっていたのだ。この少年は普段、そんなに元気がある方ではない。騒がしいリズや、主張の強いフィリオに埋もれて、目立たない性格である。しかし、優しい内面を表しているかのように柔和な笑顔を浮かべたその顔を見ていると、マサトはいつも落ち着きを感じるのだ。フィリオとリズが〝動〟だとすると、自分とサトルは〝静〟に当たる。天高くそびえることを欲する建設中の塔。サトルに浮かんだ陰りを見ていると、塔の基礎が揺らごうとしているかのように感じる。

「やっぱりサトルは優しいよな。フィルにも見習って欲しいよ。でも、そんなに気にしなくても大丈夫だって。多分、バクは俺達に心配かけないようにああ言ったんだと思うぞ。あいつもAIの癖にやたらと気を使うからなぁ」

マサトは大げさに首を振った。サトルの内向きな傾向は自分とよく似ている。こういうときは、考えすぎても碌な事にはならない。

「フィルのやつ、時々意味分からないこと言うけど、今回は一理あるような気もしてきたな。確かに、俺達って考えすぎなのかも。誘拐なんてごっこ遊び、馬鹿らしいとは思うけど、たまには気晴らしも必要だしな! 俺達があいつらを驚かせてやろうぜ!」

サトルが眉を上げる。少しずつではあるが、表情も和らいできたようだ。

「うん、そうだね。ちょっとはリズ君を見習ったほうがいいのかな?」

「はははっ! あいつの真似だけは止めてくれよ。お前まであっちに回られたら、突っ込み役が足りなすぎるぜ。リズ一人でも大変なのにな!」

その意見に全く同感だといったふうに頷くサトル。気分が落ち込んだときは、とりあえず何か行動したほうが気が紛れる。マサトはフィリオとの長い付き合いで、それを何度も気付かされてきた。

「さっ、じゃあ場所はどこにする? なんたって、監禁しないといけないらしいんだからな。しかも、電波も遮断できないといけないし」

「うーん、電波が届かないところかぁ……。企業の実験サイトとかかな。僕も聞いたことしかないんだけど、電波を使う機械を作っている企業のために、電波が入らないようになった区画があるんだって。宇宙空間って、地上よりも電磁波が大きいから、作るの大変だったっておばあちゃんが話してたことがあるんだ」

サトルの祖母はほむらのセンター長である。しかも、現場上がりの叩き上げらしいのだ。マサトは直接会って話したことはないが、話には良く聞いている。

「へぇ……そんなところがあるのか。でも、勝手に使ったら絶対怒られるよなぁ。もし使えたら、本格的で面白そうだけど」

「だよねぇ。宿森先生に頼む訳にもいかないし……」

サトルは少し黙り込んで考えた後、決心したように一度首を立てに振った。

「うん。今度おばあちゃんに頼んでみるよ」

その言葉に、マサトは少し怖気づく。たかが子供の遊びに、限られたほむらの設備を使ってしまってもいいものなのだろうか? それに、センター長はなかなか厳しい人だと聞いている。簡単に許可が出るとは思えない。

「それはさすがに不味くないか? サトルのおばあちゃんも迷惑だろうし。それに、どうやって頼むんだよ。バクを監禁するためだって言っても、貸してくれるわけないぞ?」

「……大丈夫だよ。僕が適当に誤魔化して喋るから」

それはつまり、嘘を吐くということなのだろう。サトルの性格上、嘘を吐くのは気安くはない。しかも、その相手が尊敬している祖母となると、なおさらだ。それでもなお実行しようと思うほど、バクのことを心配しているのだろう。サトルがこんなにも積極的になるのを、マサトは初めて見た。

「そっか。まあ、無理するなよ。たかだ遊びなんだからな。借りれそうになかったら、演習場とか使えばいいだろうし。場所はどちらにしても、無重力区画だな?」

「うん。バク君も行き先は無重力区画だろうから、そのほうが都合いいしね」

その後二人は、夜を徹して計画を詰めていった。普段は〝静〟を司る二人ではあったが、作り上げた計画は実に大げさで、わざとらしく、本当に馬鹿げたものになった。たまには大騒ぎしてみるのも悪くない。

「ねえマサト。これ、どういうこと?」

派手な和服にカツラを被ったフィリオが、ふてくされた表情でつぶやく。頭の上には、これまた派手な色の傘。

「俺の方も何なんだよ!」

そういうリズもまた、カラフルな衣装に身を包んでいる。これでもかと光るスパンコールが非常に腹立たしさを駆り立てる。頭には白と赤のふざけたシルクハット。用意したのはマサト自身だが、まさかこれほど気に障る姿になるとは思わなかった。

「言っただろ? 俺達が計画を立てるから、お前達はそれに従えって。バクにばれない為には、それ位しなきゃ無理だって」

言いながらマサトは、笑いを堪え切れずにいた。横にいるサトルも口を押さえて肩を震わせている。もちろん、このような変装をしたところでバクにばれない訳がない。フェレット種のリズはまだしも、エア・ドラゴン種はかなり珍しい。おそらく、ほむらには数えるほどしかいないはずだ。一応、衣装で隠そうとはしてみたが、長毛に覆われた特徴的な尻尾と翼を見れば、一瞬でフィリオだと分かってしまうだろう。この変装は、普段やられっぱなしの二人へのささやかな復讐なのである。

「それに今回の計画ではその格好が重要なんだから。誘拐するには、まずバクをおびき寄せないといけないだろ?」

マサト達が立てた計画はこうだ。まずは、大道芸人に扮したフィリオとリズが、リンク・ステーションで芸を披露しながらバクを待ち構える。興味を持ってバクが近づいてきたところを見計らい、車両へと無理矢理連れ込む。車両はマサトがマニュアル操作に切り替えておき、サトルが確保してくれている電波暗室――外部からの電磁波が入り込まないように、隔離された部屋――へと連れ込む。これで、誘拐犯の出来上がりである。

「僕達が芸をするんだよね? でも、何も練習とかしてないよ? リズ君はそのままでも芸人っぽいから大丈夫だろうけど、僕は知性が溢れ出過ぎてるからなぁ」

「フィリオ、心配は無いぜ。その付鼻、凄く馬鹿っぽくて似合ってるぞ」

器用にも、尻尾でシルクハットをもてあそんでいる。フィリオはともかく、リズの方は本当の大道芸人だといっても通じそうだ。

「フィリオ君、芸とかは僕が映像で出すから大丈夫だよ。とりあえず手を適当に動かしてくれればそれっぽくなるはずだから」

サトルがPDAを弄ると、フィリオの目の前に大きな太鼓が現れる。手の近くにはバチが浮かび、太鼓を叩く仕草をするとちゃんと音が出る。コンタクトに映像を重ね合わせているのだ。一方、リズの周囲には、お手玉が現れる。手を回すと、くるくるとお手玉が中を舞う。どうやら、ジャグラーをイメージしているらしい。

「わあっ! 面白いね! これ、サトル君が作ったの!」

フィリオが目を輝かせて、太鼓を打ち鳴らす。動きがコミカルなためリアリティはまるでないが、確かに見ていて楽しい。

「まさかあ。これはネットで探してきたものなんだよ。宴会用に作られたソフトなんだってさ。ここで使えるように、ちょっとは調整したけどね。上手く行って良かった!」

マサトは少し作業の手伝いをしたのだが、ちょっとどころの作業ではなかったような気がする。こういうのは、才能が物を言うのだろう。

「よし、これで準備万端だな! じゃあ、サトルは先に向かっといてくれ。後は俺達がバクを連れて行くから」

「うん。後はよろしくね!」

サトルを見送った後、バクが近づいていることをPDAで確認し、マサトも車両へと乗り込む。

「任せたぞ! しっかりやれよ!」

尻尾を大きく上げると、フィリオとリズが手を振って返してくる。腕が動く度に二人の周囲にお手玉が飛び交い、太鼓の音が鳴り響く。非常に間抜けである。これだけでも、頑張って計画を立てた甲斐があったというものだ。

車両に乗り込んだマサトは、先頭にあるボックスのふたを開け、運転モードをセミ・オートに切り替える。これで、出発時刻や目的地をある程度自由に決めることができるようになった。渋滞を防ぐため、一定時間が経つとオート運転に切り替わるようになっているので、バクが接近するまで待っていたのだ。操作方法を簡単に確認し、席に座る。

フィリオ達をモニタしているカメラの映像をコンタクトに転送し、しばらく待つ。二人は体をちょこちょこと動かし、大道芸人になりきっているようだ。しかし、カメラの映像には、宴会用ソフトの処理画像が重ねられないため、不気味である。

数分後、バクがカメラの端に映し出される。二人の姿を見て足を止めたようだ。首を傾げた後、奇妙な人物を避けて大回りでステーションへと向かっている。警戒するのは当たり前だ。このステーションは、大道芸人がいるようなハブ・ステーションではない。ただ、小さいステーションであることが幸いして、車両に乗り込むには怪しい二人に近づく必要がある。

バクが十分に近づいてきたところで、フィリオがリズを小突くのが見えた。おそらく、先に行って捕まえろと言っているのだろう。しかし、リズは中々動こうとしない。業を煮やしたのか、フィリオが背中に挿した傘を引き抜き振りかぶる。その様子を見ていたバクが、そっとその場を離れようとした。もはや演技など台無しである。フィリオが傘を放り投げ、バクの方へ飛びかかろうとする。しかし、無様に転倒。どうせ着物の裾を踏みでもしたのだろう。その上をまたいで、リズがバクの腕を掴む。次の瞬間、バクが勢い良く頭を突き出す。慌てて避けるリズ。怯んだ隙を突いてバクが逃げ出そうとするが、ようやく立ち上がったフィリオが前を遮った。思いもかけない白熱した展開に、マサトは息を飲む。

(フィル、あの頭突き避けれるのか?)

このような事態になるとは、予想していなかった。怪我をされては困ると思ったマサトが、慌てて車両を出ようとしたとき、バクがふと動きを止め、フィリオになにやら話しかけている。フィリオの方もなにやら答えているようだが、弁明しているようにも見える。ようやく、バクに正体がばれたのだろう。その中にリズも合流し、バクを掴みながらこちらへと向かってくるのが見えた。

「ねえ、どうしたの? 何かのイベント? 仮装大会とか?」

「こらっ! 大人しくしろ!」

なにやら、楽しそうなバクの声と、あくまでも役割を守るリズの怒声。馬鹿馬鹿しくて面白い。黒い帯を取り出たフィリオが、バクの前にしゃがみこむ。

「これでいいかな? じっとしててよ」

リズと違ってこちらは、演技する気があるのかどうか甚だ疑問である。電子の目にアクセスできるバクに、目隠しをして果たして意味があるかは疑問だが、大事なのは雰囲気である。手を後ろに回させ、素直に従うバクをそのまま後ろ手に縛る。

「うん。これでよしっと。うーん、やっぱり手錠の方が良かったなぁ」

「なに、馬鹿なこと言ってんだ! 出すぞ!」

最初フィリオはどうしても手錠を使いたいと言って聞かなかったのだが、怪我をするとまずいということで止めたのだ。マサトは、その手錠を何処で手に入れたのかが気になったが、怖くて深くは追求していない。

「ねえ、マサ……じゃなかった。えっと……ドライバーでいいか。検問とか無いの?」

「あるわけ無いだろ!」

その後もフィリオからの無茶振りや、バクからの質問が次々と飛んできたが、徹底的に無視する。変に思ったバクが、あまりにも喋るので、フィリオが猿轡をしようと言い出し、マサトはそれを止めるのに必死であった。

バクが何も返事が返ってこない状況に飽き、暇そうに体を揺らし始めたところで、ようやく目的地へと到着する。無重力区画、第三研究地区、C棟電波暗室二号は大きめの一軒家といった大きさで、入り口には大仰な扉が付いている。今まで黙って付いてきたバクだったが、ここに来て動きを止める。

「ねえ、お兄ちゃん。ここ入るの?」

不安そうな声に、そろそろネタ晴らしをしても良いと考えたマサトが、バクの目隠しを取る。そして、少し働きすぎのバクを心配して、思いっきり遊ぶために誘拐を企てたこと、邪魔が入らないようにこの場所を選んだことなどを説明した。

フィリオが中へと促すが、バクはどうも乗り気ではないようだ。

「バク君、心配しなくても大丈夫だって。お仕事のことなら、僕達が無理矢理連れ出したことにすればいいんだから。ほら、もし怒られたら、全部リズ君のせいにすれば良いよ。今日は思いっきり羽伸ばそっ!」

邪魔な衣装を剥ぎ取り、文字通り自分の翼を広げるフィリオ。責任を押し付けられた形のリズが、目の前に広げられた鬱陶しい翼を押しのける。

「ったく、なんで俺のせいになるんだよ……」

「だって、リズ君ならこういう事しそうじゃない?」

外の騒ぎを聞きつけたのか、サトルが重厚な扉を開けて出てくる。

「あっ! 遅かったね。どうかしたの?」

サトルとバクを交互に見たフィリオが、何か思いついたように喋り始める。

「ほら、バク君に遊んで貰おうって言い出したの、サトル君なんだよ」

「えっ、僕は……」

口を挟ませず、先を続ける。

「サトル君はバク君のこと、すっごく心配しててね、計画とか一生懸命考えてくれたんだ。あの芸とかのソフトも一人で作ってくれたみたいだし。ね?」

フィリオがサトルに目配せする。その意味を汲んだサトルが後を続ける。

「あの……迷惑だったかな?」

「そうだったんだ……。ううん。ありがと、サトル兄ちゃん。心配かけてゴメンね」

「謝らなくていいよ。とりあえず、中入ろっか? 扉を開けとけば、大丈夫だからさ」

サトルが先導して一行は扉のあちら側へと向かった。

電波暗室の中は、全面が四角錘をした奇妙な突起に取り囲まれており、一種独特の雰囲気が広がっていた。壁面の突起の一箇所に、場違いなピンクと白の袋がマジックテープで貼り付けられている。その中にはたくさんのお菓子。無重力でも食べれるお菓子を選んで、サトルが用意してくれたのだろう。

「バク君、今日はホントにゴメンね。突然こんなとこにつれてきちゃって」

サトルがお菓子を皆に配り始める。

「最初は変な人が居たから、びっくりしちゃったけど、楽しかったよ! 誰も話してくれないから、オカシイなあって思ってたんだけど、みんな役を演じてたんだね。それにしてもフィリオ兄ちゃん、演技下手すぎるよ」

バクの指摘に、マサトが苦笑する。そもそも、演技しようという気があったのか怪しいところである。最初は乗り気でなかったマサトのほうがまだ役柄を演じていたと思う。当の本人はというと、勝手に袋の中をごそごそと探っていた。付き合い始めてからもう十年以上になるが、その行動が読めないことは未だに多い。マサトは親友を放って置いて、バクに問いかける。

「じゃあ遊ぶとするか。バク、何したい? 今日はお前の好きにしていいぞ」

遊び道具を取るために宙を舞おうとしたサトルの腕が、掴まれる。

「あの……遊ぶ前にちょっといい?」

視線がバクに集まる。

「あのね、お兄ちゃん達に相談したいことがあるんだ」

サトルがバクの方へと向きを変えた。

「こんなこと言ったら、お母さんやお兄ちゃん達を心配させちゃうと思って、なかなか言えなかったんだけど、僕もどうしたら良いか分からなくなっちゃたから、言うね」

「僕ね、自分が何なのか良く分からないの」

その瞳をじっと見つめ、先を促すサトル。

「分からないって、どういうこと?」

「うん。例えばね」

〈「こんな感じ」〉

バクの口と、スピーカーから同時に声が聞こえる。

〈〈〈「どう? 僕が色んなところに居るみたいでしょ?」〉〉〉

マサトたちが持つ、PDAの外部スピーカーからも同じ声が反響する。

〈〈〈「最初は大丈夫だったんだけど、だんだん自分ってなんなのか良く分からなくなってきちゃって……。一体どれがホントの僕なのかな?」〉〉〉

マサト達三人はバクを呆然と見つめる。

〈〈〈「そうしたら、たまに生態端末をどうやって制御してたのか、思い出せなくなるときが出てきたの」〉〉〉

サトル一人だけが落ち着いた様子だ。バクの告白を褒めるかのように、そっと手を握る。

「そうなった時って、バク君はどうするの?」

〈〈〈「えっとね、そんなときはほむらのカメラとか使ってお仕事したりするんだけど、だんだん怖くなってくるの。自分が散らばっちゃって、消えてしまうんじゃないかって。それが嫌だって思ったら、気付いたらこの体の中に居るの。そしたら、ちゃんと制御できるようになるんだ」〉〉〉

「やっぱり、僕ってお兄ちゃん達と違って、変だよね……。僕って何者なのかなぁ?」

スピーカーからの声が止む。目をつぶって、涙を滲ますその姿を見ていると、とてもAIだとは思えないが、その中身は人間とはずいぶん異なっている。

一体自分は何者なのか?

この問いは長年人類を悩ませてきた。その答えはまだ出ていない。しかし少なくとも、人間の入出力系統は自らの体それ一つである。そこに重きを置けば少なくとも自我は保てる。対してバクは、生態端末以外にもほむら中の入出力装置にアクセスできるのだ。いったいどれに重きを置けばよいか分からなくなっても無理はない。

それに、バクには同類がまだ居ない。他にもAIは何体か存在しているが、バクのように生態端末を核として誕生したAIは初めてだとリョウコが言っていたのを、マサトは思い出す。悩みがあっても、それを相談できる仲間が居ないのだ。孤独は、辛い。

サトルが、手を伸ばしてバクの頭を捕らえる。そして、頬を力の限りつねる。顔をしかめるバク。

「痛いよっ! サトル兄ちゃん!」

「良かったぁ。夢じゃなかった!」

バクがぽかんと口を開ける。

「あのね、これが夢かなって思ったときは、こうやって頬をつねるんだ。痛かったら、夢じゃないし、もし夢を見ていたら、そっから覚めるでしょ? バク君が痛がったんだから、これは夢じゃない。で、僕達の目の前にバク君が居る。だから、この体こそがバク君なんだよ!」

サトルが強くバクの肩を叩くと、反動で互いの体が離れ始める。

「わわっ! 止めて!」

バクが翼を翻し、サトルの動きを止める。

「ごめん! でも、こんなこと、その体が無いと出来なかったよね? なんか変なこと言っちゃったけど、僕が言いたかったのは、あんまり深刻に考えないほうが良いよってこと。リズ君じゃないけどね」

サトルがちらりとリズを見る。リズはというと、どうも不満そうだ。なぜいつも俺ばかりがこんな役回りなんだ、とでも思っているのだろう。

「僕は目も口も耳もひとつしかないから、バク君のキモチを本当に理解するのは無理かも知れないけど、僕達がバク君だと考えているのはこの体なんだ。だから、バク君もこの体が自分なんだって思ったら駄目かな? 僕達人間だってさ、自分が何者なのか分からなくなることって良くあるんだ。昔の偉い人も色々考えてたみたいだしね。それに、意識を形作ってるのって、この脳みそでしょ?」

指先で自分の頭をこんこんと叩いた後、手のひらをバクの前に広げる。

「じゃあ、この僕の手って何者なの? 僕が脳だとしたら、この手は僕じゃないかもしれないよね。本当は他のことを考えてるかも……。ただ脳みそが、無理やり自分のやりたいように操ってるのかもしれないよね? 手はそうしたくないのに……」

意図を掴みかねた様にバクは押し黙る。その様子を見て、サトルが突然笑い声を上げる。

「はははっ。でも、こんな風に考えるのって、なんかおかしいよね? 僕はこの体全体が自分だって思ってるよ。だって、手とか足とかが勝手に別々のことを考えるなんて、変だもん。これが僕ですって言ったほうがずっと簡単で、分かりやすいよ! どうかな? 僕達がバク君だって思ってるこの体を、バク君も同じように自分自身だって考えたら?」

こんなに饒舌なサトルは始めて見る。マサトも自分が何者なのかと言われると、すぐに答えられる自信はない。しかし、自分はここに居るし、周りもそう思ってくれているはずだ。夢の中なら、そうではないかもしれないが、少なくとも自分は眠ってないと思う。そしてそれは、バクも同じなのではないだろうか? 自分達がバクをバクとして認識できる以上、バクは存在しているのだろう。この生態端末の中に。

うつむいて考え込むバク。そのサトルの言葉を噛みしめているのだろう。少しの間静寂がその場を支配し、バクが頭を上げる。その顔にはバクに良く似合う、太陽の様に明るい笑顔。

「うん。なんだか、騙された気もするけど、そんな気がしてきた。有難う、サトル兄ちゃん! でも、ちょっと強引だよ! なんだか、フィリオ兄ちゃんみたいだね」

バクの表情を見てマサトもほっとする。サトルの考えが、バクの悩みを払拭できたかどうかは分からない。おそらく、完全には消えてはいないだろう。そんなことは、到底無理だ。しかしその考え方は、自分の拠り所を見失っているバクにとって多少なりとも救いになったのは間違いなさそうだ。

「じゃあさ、一度あの扉閉めてみない?」

「えっ!」

マサトは、サトルの大胆な提案に、驚かされた。扉を閉めると言うことは、本体であるハイブリッド・コンピュータとの通信を断つことに当たる。一応、生態端末自体にも、意識を保つ能力はあるとのことだったが、本当はどうなのかがこれではっきりすることになる。これは一種の賭けだ。もし、これでバクの端末から意識がなくなったら、バクは自分の拠り所がますますわからなくなる可能性がある。しかし、そこをぼんやりさせたままでは、バクの悩みは軽くならないだろう。

サトルの提案に、再び不安な表情を広げるバクの背中を、リズが勢いよく叩く。反動で遠ざかりながらも、大声で鼓舞しだす。

「バク、大丈夫だって! サトルがそう言うんだから! 真面目なこいつが言うんだから、間違いないぜ! それに、お前がどう思っていても俺はお前のこと、同じ仲間だと思ってるぞ。一緒に遊ぶのに、人間だとかAIだとか関係ないぜ! ちょっと、ウィンドボールが強すぎるのが難点だけどな!」

誇らしげに尻尾を立て、ガッツポーズを見せるリズに、バクも拳を振り上げる。

「へへっ、有難う。やっぱりリズ兄ちゃんはいつも元気だね。うん、僕、なんか勇気が出てきた! やってみる!」

バクがそう言うと、入り口の扉がゆっくりと閉まり始める。おそらく、バクがリモートでコントロールしたのだろう。サトルがバクの不安を少しでも和らげようとするかのように、肩をそっとつかむ。

――シュ

完全に扉が閉まった。物音一つしない静寂と圧迫感が、五人を包み込む。

サトルに抱かれたバクの体が、一瞬弛緩する。だが、その目には意識の痕跡がはっきりと残っていた。

「どう? バク君?」

「う……」

何か言おうとしたように口が動いたが、聞き取れない。再度の静寂。八つの瞳が、バクを見守る。

やや時間を置いて、バクが再び唇が開いた。

「うん。ごめん。ちょっと制御に時間がかかっちゃった。でも、大丈夫そう。なんだか体が重たいかな?」

ほむらのハイブリッド・コンピュータと、バクの生態端末では、処理能力に天と地の違いがあるはずだ。むしろ、前とそれほど変わらない速度で会話できるほうが驚きである。

「なんかとっても静かだね。お兄ちゃん達の息する音以外、何にも聞こえない。それに、他の映像も見えないし。やっぱりこれが僕だったんだ……」

バクがしみじみと自らの手を見つめる。

「おめでとう……」

サトルがバクの体をぎゅっと抱きしめた。あふれ出た涙が、球体となって空中へと飛び出す。

「ホントに良かったぁ……」

「ありがと。サトル兄ちゃん」

バクから身を離し、瞼をぬぐったサトルが再度口を開く。

「あのね、リョウコさんから聞いたんだけど、バク君の名前って、夢を食べる〝獏〟からとられたんだよね?」

「うん。僕はよく覚えてないんだけど、最初はね、なかなか意識が生まれなかったらしいの。でもあるとき、僕の元になったプログラムをお母さんがネットワークに繋いで、放って置いたら、いつの間にか他のコンピュータにアクセスしてたみたいなんだ。それが人間の〝無意識〟を研究している研究所のデータベースでね、それを勝手に取り込んじゃったみたいなの。そしたら僕が生まれた。だから、僕は人の無意識――夢を食べちゃうからバクって呼ばれるようになったんだ」

「でしょ? だから、バク君は夢を旅するプロフェッショナルなんだよ。その夢の旅人が、夢の中で迷っちゃったら、誰が僕達の悪夢を食べてくれるの? そうなったら、皆、安眠できないよ」

はにかんだ笑顔を浮かべるサトル。バクも少し照れた様子で答える。

「へへっ、そうだね。でも、もう大丈夫だよ。迷いそうになったら、頬をつねればいいんだよね?」

バクがサトルの頬をつねる。

「バク、自分のでやれよ! じゃあ、解決したことだし、思いっきり遊ぼうぜ! 今のバクはそんなに頭回らないだろ? 今なら勝てる気がしてきた!」

いつの間にかボールを取り出したリズが、マサトのほうへとパスをする。壁を蹴って、空中でキャッチ。逆サイドの壁にたどり着く前に、リズのほうへと投げ返す。リズがボールを受け取る直前、わっと言う声とともに、フィリオが間に割り込んでくる。どうやら、バクに無理やり押されたらしい。ばたばたと翼を羽ばたかせるフィリオに弾かれて、ボールはあさっての方向へ。リズはすでに空中へと飛び出しており、ボールを追うことが出来ない。それを横目に見たマサトは、勢いをつけてボールの進行方向へと向かう。今度悲鳴を上げたのは、サトルである。一直線にマサトのほうへと向かってくる。翼を広げ、急ブレーキ。サトルとの邂逅は回避できたが、ボールはすでにバクの手の中である。四枚の大きな翼を最大限に生かして、弾丸のように飛ぶその体に、もはや誰も追いつけない。どうやら、ハイブリッド・コンピュータから切り離されても、その強さは変わらないらしい。

ひとしきり遊んだ後、マサト達はリョウコの元へと向かっていた。半日近く全く連絡が取れない場所にいたのだ。おそらく大騒ぎになっているだろう。それを考えると、マサトは少し憂鬱になる。

「どうだ、バク? なんかリョウコさんから問い合わせあったか?」

「ううん。仕事に関する問い合わせはあったけど、他は別に何もないんだ。変だよね?」

マサトも首を捻る。バクのことをあれだけ心配していたリョウコなのだ。常にモニタしているわけではないだろうが、生体端末と完全に通信が途絶えれば、必ず気付くと考えるのが普通だ。それとも、何かあったのだろうか? 不安を感じつつ、たくさんのパイプに取り囲まれた通路を進む。もう直ぐリョウコのラボだ。

「すいませーん」

恐る恐る、声を掛けるフィリオ。流石に少しは緊張しているらしい。少し間をおき、立ち入り禁止の通路から、作業着姿のリョウコが顔を出す。髪の毛を小さくまとめ、その上からビニールの帽子を被せている。コンピュータのメンテナンスでもしていたのだろうか?

「あら、ユーレ君じゃない。どうしたの? バクも一緒だし」

リョウコの反応に、マサト達は戸惑う。絞られるのを覚悟で参上したのだ。これではまるで、何事も無かったかのようではないか。

「あの、お母さん、何か変なことなかった?」

「えっ、変なこと? 特に何も無かったわよ。一体どうしたのよ、みんなして?」

五人は顔を見合わせる。やはり、本当に気付いていなかったようだ。気を取り直したフィリオが、今日の出来事を順を追って説明する。自分達がバクを電波暗室に連れ出したこと。扉を閉鎖し、バクの生体端末とハイブリッド・コンピュータとの接続を完全に切ったこと。それでも、バクの意識が保たれたこと。

その話を聞いて、リョウコは怪訝な顔をする。

「ねえバク。本当に通信切れてた?」

「うん。端末からの情報しか来なくなったし、制御も少し重たくなったから、多分切れたと思うよ。それに、あの電波暗室って、僕の通信帯域幅はほぼ完全にシャットアウトできるはずだし……」

「あのね、バク。あなたがその電波暗室にいたときも、ハイブリッド・コンピュータであなたの思考活動が観測されてるのよ。しかも、生体端末だけなら、意識を保つのがやっとで、運動までは出来ないと思うわ。しかもユーレ君達と遊んだのよね? ウィンドボールで」

バクが眉をひそめながら、こくりと頷く。

「確かに、この端末でも、最適化すれば意識活動と身体制御を両立できるとは思うわ。でも、あなたはまだその段階まで行ってないと思うの。多分、体が重いくらいで済まないはずだわ。とてもあんな激しい運動ができるとは思えないの」

「でもっ、ホントだよ! 信号強度上げてみたけど、ほむらのネットに接続できなかったし!」

このやり取りを見ていた四人は互いに目を見合わせる。バクが嘘をついていたとでも言うのだろうか? しかし、バクの態度を見ていると、とてもそうとは思えない。またあの時、マサト達はPDAでの通信も試そうとしたが、エラーが出たのを確認している。

「それに、ほら! このラボも、暗室もあの時間にほとんどトラフィック無いじゃない! 扉が閉まった瞬間に1%以下に減ってるよ!」

マサト達の目の前に、トラフィック表示が出る。確かにバクが言うように通信量ががくんと落ちている。

「そっ、そうね……。やっぱりあなたの端末が成長したのかしら? でも、ニューロ・ネットワークの複雑度がまだ足りないはずだし……。それに、ハイブリッド・コンピュータとの干渉跡も見られるわ。ソリッド―オーガニック間のリンク強度も意識があるときと同等……」

ラボに備え付けられた、巨大なコンソールを凄いスピードで操作するリョウコ。まるで獲物に照準を合わして今にも襲い掛からんとする猛獣のように耳をピンと立て、目つきも真剣そのもの。とても邪魔できる雰囲気ではない。

ふと手を止めたリョウコが振り向く。

「ねえ、バク。あなた、ほむらに再リンクしたとき変な感じしなかった? 自分が二人いるとか?」

バクはその質問の意味が分からないというように、首を振る。

「はぁ……やっぱりそうよね。最初は意識が二つに別れたのかもと思ったんだけど、多分違うわ。生体端末の活動痕とハイブリッド・コンピュータの活動痕の相関が完全に取れてるもの。何かの通信経路が無いと説明できないわ……。でも、通信トラフィックどころか、ハイブリッド・コンピュータからの通信要求さえ出ていない……。駄目。分からない」

はあっと息を吐いたリョウコが、赤茶色の液体が入ったチューブに口をつける。

「でも、まあいいわ。原因こそ不明だけど、この子の悩みが無くなったみたいで。解決したのが私じゃないのがちょっと悔しいけどね」

バクの体を引き寄せ、その頭を撫でた。

「やっぱり、親だけじゃなくて、友達も必要だったみたいね」

「ごめんなさい、お母さん」

こうしていると、母親に甘える子供そのものだ。

「いいのよ。でも、これからは直ぐに相談してよ。それにしても、あなたは幸せね、バク。こんな良い友達が出来たんだから」

リョウコがマサト達に目を移し、口元を緩ます。その目に見つめられると、自然と背筋が伸びるのをマサトは感じた。ハヤトといい、リョウコといい、この一家の目つきの鋭さは何とかならないものだろうか?

「ユーレ君、空木君、オルシーニ君、そして、結城君、本当に今日は有難う。改めて御礼を言わせてもらうわ。私達があれだけ考えても分からなかったことをあっさり解決してしまうんだもの。さすがハヤトが褒めるだけはあるわ。これからも、バクといいお友達でいてね」

マサトとフィリオを交互に見つめ、にやりとしてみせる。

「結城君は良くここに来てくれるけど、他の子も別に遠慮しなくてもいいわよ。ほら、空木君とか、オススメのデート場所とか教えてあげるから」

マサトは直ぐにでもこの場を逃げ出したくなった。横を見ると、フィリオも所在無さげに尻尾を振っている。今この瞬間は、全く同じ気持ちだろう。恥ずかしい。ハヤトにはまだ知られていないことを祈るばかりだ。

今までにこやかに話していたリョウコだが、急に目を細める。口調も厳しいものに変わる。その迫力に、今まで悠長に構えていたリズも姿勢を正す。

「ただ、電波暗室を勝手に使ったのは感心しないわね。出来ればこういうことは、実行に移す前に私達に相談して欲しいわね。きっと、ハヤトから大目玉食らうわよ。彼って、怒ると結構怖いんだから。もしかしたら、センター長直々に話があるかも」

その言葉に、サトルがびくっと体を震わせる。

「まあ、センター長に私の方から情状酌量をお願いしとくわ。いいわよね、結城君?」

すっかり小さくなったサトルが、お願いしますとか細い声を出した。

――後日談

その後マサト達は、ハヤトからたんまりと課題を頂戴することとなる。テーマは〝地磁気と通信ノイズについて〟。どうやら、センター長直々の指令らしい。ただ、その課題には執行免除がついている。条件は、来月末に行われる宇宙空間実習の修了パーティーで、大道芸を披露すること。ちなみにマサトとサトルは、迷うことなく課題レポートを提出する方を選んだ。残りの二人は、どうやらパーティーに向けて日々練習にいそしんでいるらしい。もうすっかり元気を取り戻した、世界で唯一のAIと共に。

第三章へつづく

登場人物 =とじる=

空木雅人(ウツギ マサト)

スカイ・ドラゴンの♂16歳。あの一件以降、プライベートは充実しているらしい。でも、良く考えると前から特に変わってないような……いつも振り回されて大変です。

フィリオ=ユーレ

エア・ドラゴンの♂16歳。果たしてそれは天然なのか、ワザとなのか?結果よければ全てよし。勢いだけかと思いきや、全ては計算?

リズ=オルシーニ

ラビットの♂16歳。ひたすら周囲に迷惑と元気を振りまく、ある意味マイペースな人。ちょっとやそっとじゃへこたれませんっ!勉強以外は結構こなせる器用な奴でもあります。

結城悟(ユウキ サトル)

ラビットの♂16歳。今回の主役はこの方!真面目一辺倒じゃありません。やるときにはやるんですっ!でも、後で自分の行動に照れたりも……

岸谷遼子(キシタニ リョウコ)

ホワイトタイガーの♀29歳。いつもはバリバリ働いているけれど、バクの前では母性を見せることも。座り作業ばかりと思いきや、結構体も動かすみたいです。

バク

3歳のAI。見た目は子供、頭脳はAI。最近、働き詰めでお疲れのよう。こう見えても、かなーり気は使っているんですヨ。無重力では無敵です。