パイロットを目指し、宇宙で働く研究者やエンジニアを養成する〝東アジア宇宙産業大学校〟に通う空木雅人は、実習を前に親友フィリオと共に買い出しに行くことにした。ただの買い出しのはずが、いつの間にかデートのように……。
~2069年11月~
「空木君は勉強、実技ともに全く問題ないですね」
と担当教官の宿森隼人は口元に軽い笑みを浮かべながら言った。雰囲気を和らげるためだろうが、ホワイトウルフ種特有の鋭い目つきと口から覗く牙が邪魔をしてあまり効果を挙げていない。
宿森に呼びかけられたスカイ・ドラゴン種の青年、空木雅人は小さく頷く。緊張のためかスカイ・ドラゴンの特徴である大きな翼を体へぎゅっと寄せている。マサトは宇宙で働く研究者やエンジニアを養成する〝東アジア宇宙産業大学校〟の専門課程二年に所属する学生であり、現代の日本では高校二年生に当たる。
宿森先生は柔らかい口調で先を続ける。
「ただ、僕としてはもう少し積極的に参加してくれると有難いかな。同じグループの皆も空木君のことを頼りにしていると思うよ。ほら、ユーレ君はいつも君に助けてもらっているようだしね。予備実習の結果は他のグループより断然良かったし、もっと自信もっていいよ」
専門課程二年の学生は年度末に宇宙空間で実習を行うことになる。実習は四、五人の小グループで行われ、話に出たフィリオ=ユーレはエア・ドラゴン種のマサトと同じグループの親友である。
軌道エレベータの完成により宇宙旅行も庶民の手に届くようになってきたとはいえ、ほとんどの学生にとってはこの実習が初めての宇宙体験となる。また、単なる旅行ならまだしも宇宙空間に出ての作業となると一般人が経験することはまず無い。そのため、実習前の一ヶ月間で予備実習が行われ、現役の研究者やエンジニアがその指導を担当する。宿森先生は実習の舞台となる軌道エレベータの静止軌道プラットフォーム〝ほむら〟で働く現役の環境システムエンジニアだ。
「はい、頑張ってみます」
硬い会釈をして緊張気味に答えるマサト。
マサトは大柄で、頭には立派な二本の角をもつため、豪胆な性格に見られがちなのだが、実は小心者で人見知りが激しい。そのため、一ヶ月経った今でもまだ宿森先生に慣れないでいる。最も、宿森先生もあまり社交的なタイプではないため、マサトにのみ原因があるという訳ではない。
普段慣れ親しんでいる教室の椅子や机とは違い、立派な家具が置かれた重厚な雰囲気を持つ面談室が落ち着かないのか、マサトの立派な尻尾が所在無さげに左右に揺れる。
「予備実習の結果発表はこれくらいにして、来週からいよいよ始まる宇宙空間実習の予定と注意点について説明するね。はい、これが空木君の実習計画になります」
宿森先生は机に資料を広げ、説明をはじめる。
「もう知っているとは思うけど、今回の実習では〝ほむら〟に三ヶ月間滞在し、宇宙空間で安全に暮らす方法について学んでもらうことになります。今までに学んだ知識や技術をフルに生かして基地の外の宇宙空間で安全確保に関する実習してもらいます。宇宙機のパイロットを目指す空木君にとっては今回の実習が夢実現への第一歩ということになるね。」
宿森先生の説明にマサトはうんうんと頷く。マサトは親友フィリオと共に宇宙探査の職に就くことを目指しており、今回の実習をずっと楽しみにしてきた。今までずっと緊張しっぱなしだったマサトだが、自然と体が前のめりになっている。
宿森先生は日程や必要な準備について説明したあと、自分が働く〝ほむら〟について解説を始めた。
「予備学習で習ったと思うけど、〝ほむら〟には他のプラットフォームに無い環境維持システムが搭載されていて……」
宿森先生は物静かにしていることが多く、普段は近づきがたい印象をもたれているが、専門の話になると人が変わったように饒舌になる。今回は〝ほむら〟の話なので特に力が入るのか、とても嬉しそうに職場自慢を始めた。ただ、話の内容は学生に理解できる範囲を超えており、マサトはただ頷くしかない。
十数分が過ぎた後、宿森先生はマサトの目に力が入っていないのに気づいた様子で、ようやく話を切り上げる。まだ話し足りないのか、名残惜しそうだ。
「……とまあ、いろいろ学べることは多いと思います。ちなみに、何か質問はある?」
宿森先生の問いにマサトは少し考え、ずっと気になっていることを口にした。
「あっ、あの、実習中の部屋割りはどうなるのですか?」
マサトは普段、積極的に自分の意見をいうことはあまり無いが、実習中の三ヶ月間、ずっと一緒に生活することになる部屋の相方は重要である。
「ええっと、部屋割りね。まだちゃんと決めてないんだけど、今回のグループは四人だから、二人一室になると思うよ。生活面で何か不安なことでもあるの? 実は仲良くない子がいるとか?」
マサトの真剣な表情に何かを感じたのか、宿森先生がマサトを覗きこんで心配そうに尋ねる。
「いえ、特に不安なことはないんですが、できればフィリオ君と同じ部屋が良いなと思って。リズ君やサトル君も良い奴らなんですが、フィリオ君とはずっと一緒に暮らしてるから」
リズ=オルシーニはマサト達と同じ実習グループに属するフェレット種の同級生でグループのトラブルメーカーだ。ラビット種の結城悟も同じくメンバーの一員で、何時も冷静沈着、成績優秀な知性派である。
マサトはこの二人と別段仲が悪いという訳ではない。しかし、フィリオが幼いころに両親を亡くし、マサトの両親に引き取られて以降、二人はずっと一緒に育てられてきたため、気心の知れているフィリオと同室のほうが何かとやりやすい。実際、専門課程へ進んでからも寮には入らず、マサトからの誘いで学校の近くにアパートを借りて二人で生活している。ただ、今回の場合はそれだけがフィリオと一緒の部屋を希望した理由ではない。
宿森先生は自分が担当するグループに不和がなさそうなことにほっとしたのか、手元のコーヒーに手を伸ばした。雑談が長かったため、すっかり冷えているように見える。
「ふぅ。そういえば、二人は一緒に下宿暮らしなんだっけ? 二人一緒なら生活面で心配はなさそうだし、ユーレ君と同室にしようか。オルシーニ君と結城君が同室になるのはちょっと不安だけどね。そういえば、ユーレ君は勉強で困っていることがあるみたいだから、いろいろ助けてあげてね。」
リズはいつも問題を起こしているため、まじめなサトルがちゃんと対処できるか不安なのだろう。グループ活動ではフィリオがいつもリズを強引に従わせている。フィリオはふさふさの毛皮に被われたかわいらしい外見をしており、身長もグループの中で一番小さいが、グループ内での力は最も強い。実習グループが決まって以降、フィリオはいつの間にかリーダー役に収まっている。そのフィリオでさえ、リズの扱いには手を焼いている。
サトルがリズに振り回される光景が頭に浮かび、多少気の毒に思ったが、マサトは面談室ではじめての笑顔を見せて答える。
「あっ、ありがとうございます」
「では、以上で面談は終わりです。お疲れさま。そうだ、コーヒー残してももったいないから、飲んじゃってよ」
マサトはすっかり冷えた自分のカップを手にとり、一気に飲み干す。甘党のマサトには少し苦い。軽く会釈して立ち上がり、出口へ向かうマサトに宿森先生が声を掛ける。
「三時半からユーレ君が面談だから、呼んできてね」
足早に面談室を出たマサトは翼を大きく広げて深呼吸した。廊下に掛かった時計を見ると、三時半まではあと二十分ほどある。マサトはずっと気にしていた部屋決めも上手くいったことだし、少し遠回りをして散歩しようと考えた。目的地はお気に入りの中庭だ。
中庭に出てみると、真ん中に生えた大きなもみじが真っ赤に色づき、よく晴れた空と見事なコントラストを見せている。このもみじは学校のシンボルにもなっている。頬を撫でる晩秋の風がひんやりとしていて心地よい。
マサトは先ほどのコーヒーの苦味を打ち消すために自動販売機でカフェオレを買う。大きなもみじに寄りかかってあったかいカフェオレを飲みながら、マサトは先ほどの面談を思い出す。
(今回の実習はフィルと一緒でよかった。前の実習ではリズと一緒だったから落ち着かなかったからなあ。あいつといると楽しいんだけど、ずっとテンション高くて疲れるんだよ)
リズやサトルとも仲は悪くないが、やはりフィリオと一緒なのが一番安心する。それ以上に、フィリオが他の二人と一緒の部屋で過ごすのが気に食わない。その理由をはっきりと説明することはできないが、春にあった陸上実習でフィリオと別室になったときはずっともやもやしていたことを覚えている。あの時は一ヶ月間だけだったため、なんとか我慢できたが、三ヶ月は長すぎる。
カフェオレを飲み干したマサトは、中庭の中央に広がる池を一周して教室がある校舎へ足を向ける。
中庭から校舎へ戻ったマサトは階段を登り、教室へ向かった。ドアを開け、教室に入ると窓際で昨日のテレビ番組の話題でリズと盛り上がっているフィリオが見えた。マサトはフィリオたちに近づいて声を掛けた。
「フィル、次はお前が面談みたいだぞ。宿森先生が呼んできてって」
「いよいよ僕かぁ。マサトは結構時間かかったみたいだけど、何か言われた?」
マサトのほうへ顔を向けたフィリオは不安げな表情で聞き返す。
「いや、ちょっと中庭散歩してたから、遅くなっただけだよ。面談は普通だったなあ。あの先生、〝ほむら〟の話になるとテンション上がっちゃってさ、ずっとその話ばっかりだった気がする。あとは、部屋割りの話だな。今回の実習はフィルと同室になるらしいぞ」
「そっか。やっぱりマサトは成績優秀だから、面談もすんなり終るよね。僕は前のテスト結果があんまり良くなかったから、何か言われそうで怖いな。予備実習もマサトに助けてもらってばっかりでぱっとしなかったし……」
はぁっとため息をつくフィリオ。耳もぺたんと倒れており、元気が無い。マサトはフィリオが自分と同室になったことを喜んでくれることを期待していたのだが、当のフィリオは自らの面談の方が気になるようだ。
部屋割りに興味を持ってくれなかったことにマサトは少し気を悪くしつつも、面談を本気で心配している様子のフィリオを元気付けようとする。
「そんなに心配しなくても大丈夫だって。フィルは俺たちをうまくまとめてくれたじゃん。ほら、予備実習は他のグループより結果良かったらしいぜ」
マサトはフィリオの肩に手を回し、体を軽くゆすって鼓舞するが、フィリオは半身半疑な様子だ。
「そっかあ。ホントにそうだと良いんだけどね」
フィリオの横で二人のやり取りを見ていたリズも大きく頷いてマサトの意見に同意する。
「そうそう。宿森先生は見る目があるから大丈夫だよ。俺もオルシーニ君はとても個性的だねって言われたし。そういえば、低圧実習でポテチの袋を持ち込んだことでは色々言われたなあ」
ポテトチップスの袋はその後爆発して大騒ぎになった。グレーの毛に被われた尻尾を立て、なぜか自慢げに語るリズに対して、マサトは手を振って突っ込みを入れる。
「いやいや、あれは自慢できることじゃないだろ。お前は自由すぎるんだって。そういえば、この前の工場見学では一人抜け出してフィルやサトルに迷惑掛けてたよな。まったく、少しは反省しろよ」
本気で怒り始めたマサトに対して、リズは首をかしげてとぼける。
「まあ、確かにあの事件については怒られたような気もするけど、エアロックにポテチを持っていくとどうなるかよく分かったじゃん。いい教訓だよ」
リズの大胆な開き直りに怒りを忘れてぽかんと口を開けるマサト。二人のやり取りをみたフィリオは笑い声を上げて言った。
「あはは。二人とも仲いいね。なんか本気で心配していたのが馬鹿らしくなってきたよ。まあ、リズ君よりひどいことにはならなさそうだし、頑張って来るよ。そうだマサト、面談が終ったら一緒にモザイク行かない? 実習の準備しないといけないし」
マサトはフィリオの笑い声に気を取り直して答える。
「ああ、いいよ。じゃあ、中庭で散歩して待ってるよ」
モザイクは学校の近くにある大型ショッピングモールで、専門店も充実しており実習に必要なものは何でもそろう。いつでも混み合っているため、人ごみが嫌いなマサトは必要なとき以外はあまり好んで行くことは無い。
「わかった、面談終わったら迎えに行くね。じゃあ、またあとでね」
マサト達は面談へ向かうフィリオへ手を振って見送る。
フィリオが教室を出たあと、リズが振り返りマサトへ声を掛ける。
「お前らって、ホント仲良いよな。後期実習でも一緒の部屋みたいだし、楽しそうでうらやましいよ」
マサトは窓際の机に腰を下ろして答える。日差しに暖められた机が心地良い。
「まあ、小さいころからずっと一緒に暮らしてるからな」
「そういえば、フィリオの両親って二人とも死んじゃってるんだっけ?」
リズの質問にマサトは黙って頷き、少し間をおいて俯き加減で答えた。プライベートのことはあまり話さないマサトだが、開放的な性格のリズ相手だと口も軽くなる。
「フィルと俺の親同士もすごく仲が良くてさ、俺もあいつの両親と良く遊んでもらってたし、ほんとの家族みたいに思ってたんだ。だから、あいつの両親が事故で亡くなっちゃったときは俺もすごい悲しかった。でも、フィルは俺以上にショックだったみたいで、連絡を受けたあとはずっと泣きっぱなしでさ、俺はただ慰めることしかできなかった」
マサトはすっと顔を上げ、リズの顔を見て続ける。
「その時、あいつのそばにいてやれば少しでも助けになれるかなって思ったんだ。あとは俺のお父さんもあの事故の原因を突き止めるためにすぐ宇宙探査に行っちゃって、フィルと俺の母さんと俺の三人暮らしになったから、余計にほっとけなくてさ」
「そっか。そんなことがあったんだな。おまえら結構苦労してんだな」
リズが珍しく神妙な顔つきをしている。少し深刻な話に聞こえてしまったかなと感じたマサトは机からぴょんと飛び降り、明るい口調でいった。
「まっ、そういうこと。だからリズもあんまりフィルに迷惑掛けるなよ!」
「おっ、おお。これからは気をつけるよ」
なぜか動揺した様子で答えるリズを尻目に、マサトはさっさと帰り支度を整え、出口へ向かった。マサトはリズへ手を振り、別れ際の挨拶をする。
「じゃっ、俺は先に帰るわ。また来週な」
「ああ、フィリオにもよろしく」
中庭に着いたマサトは池の傍にあるベンチに腰掛けた。目の前にある池には紅葉した葉っぱが浮かんでいる。翼で軽く扇いでみると、葉っぱがゆらゆらと揺れる。揺れる葉っぱをぼんやりと眺めながら、マサトは先ほどのやり取りを思い出した。
リズの前ではフィリオを助けるために傍にいると言ったが、実際は逆だ。フィリオは人付き合いが苦手なマサトをいつも気遣ってくれる。リズたちと仲良くなれたのもフィリオがうまく立ち回ってくれたおかげだ。フィリオが傍にいないと不安だからいつも一緒に過ごして来たというのが本当のところだとマサトは過去を振り返って思う。
最も、面談で宿森先生が言ったように、専門課程に進学して以降は学業面でマサトのほうが優れており、少しは自立できるようになってきている。最近はフィリオのことが気になるから傍に居てほしいと思うことが多い。ただ、なぜそばに居てほしいのかは自分でもよく整理できていないが。
朝晩はよく冷えるようになったとはいえ、まだまだ日差しは暖かい。フィリオのことを考えながらぼおっとしていたマサトが眠気に誘われ始めたとき、池の先にある垣根の隙間からフィリオのものらしき翼が見えた。薄いオレンジ色の翼が少し見えるだけだが、垣根に隠れてしまうくらいに小柄でオレンジの翼を持つのはフィリオに違いない。燃えるような紅葉が持つ力強さはないが、マサトは安心感を与えてくれるその色が好きだ。
予想通り垣根を曲がってフィリオが現れる。面談の結果が思ったより良かったのか、フィリオの表情は明るい。マサトに気づいたフィリオが手を振って走りよってくる。柔らかい毛に被われた尻尾も上機嫌に揺れている。
「面談お疲れ様。結果はどうだった?」
「うん。マサトが言ってくれたように、グループ活動でリーダーシップがよく取れてるってほめられたよ。あの厄介な二人をよくまとめているだって。実習でもリーダー役をまかされちゃった。あっ、ちなみに厄介な二人って言うのはリズ君とマサトのことね。まあ、勉強はマサトにもっと教えてもらいなさいって注意されたけどね」
満面の笑みを浮かべて答えるフィリオ。面談前の暗い表情が嘘のようだ。リズはともかく、自分も厄介者扱いされたことが気になるものの、フィリオが笑顔なことにひとまずほっとする。
「だから言っただろ、フィルは大丈夫だって。俺たちのグループでリーダーに向いてるのお前くらいだよ」
フィリオはマサトの発言に対して偉そうに腕を組んで頷く。
「うん、うん。確かに、リズ君はいつもあんな感じだし、サトル君はおとなしいし、マサトは肝心なときに役に立たないし。やっぱり僕が引っ張っていかないとね。みんなをまとめないといけないなんて、これから大変だなあ」
面談の前後で態度が急変したフィリオに若干呆れつつ、マサトは答える。
「……フィルって厳しいこと平気で言うよな。ちょっと気になったんだが、なんで俺が厄介者なんだ?」
「だって、なんだかんだでリズ君と一緒になって遊んでるでしょ。それに、こんなに立派な尻尾してるくせに、本番にすっごく弱いし」
フィリオがマサトの尻尾をぎゅっとつかんで上下に振る。フィリオの言い草にムッとしつつも、身に覚えがあるためマサトは話題を変えようとする。
「尻尾は別に関係ないだろ。大体、フィルがちっさ過ぎるんだよ。去年から全然大きくなって無いじゃん」
マサトは小さい子供にするようにフィリオの頭を撫でた。
「僕はマサトと違って、中身で勝負するからいいの」
背が小さいことを気にしているフィリオが口をへの字に曲げている。今度はフィリオが不機嫌になったようだ。
マサトは自分の尻尾を弄りながらコロコロと表情を変えるフィリオを見ていると幸せな気分になる。小さいころは良くじゃれあっていたが、二人が成長するにつれ、遊ぶ機会も減った。
むすっとした表情のフィリオを見ながら柔らかい毛を撫でていると自然と口元が緩んでしまう。そんなマサトをフィリオがいぶかしむ。
「マサト、どうしたの? 突然ニヤニヤしちゃって」
「いや、何でもないよ。それよりも、早くモザイク行こうぜ」
同性の親友に〝フィルがかわいいから〟などと言えるわけがない。自分の感情に気づかれたくないマサトはフィリオを駐輪場へ急かす。
二十分程でモザイクについたマサト達は自転車を停め、中央ゲートから巨大なモール内へ入る。平日の昼間だというのに、人でごった返している。ちょうど学校がテスト後の長期休暇や長期実習に入る時期で午前中に終わることが多いため、暇をもてあました学生が大部分を占めている。
人の多さにうんざりしつつ、マサトはフィリオのほうへ振り返って尋ねた。
「フィル、まずどこ行く?」
「うーん、そうだね。宇宙用品ってどこに売ってたっけ? ここって広すぎていつも迷っちゃうんだよね」
フィリオは携帯情報端末(PDA : Personal Digital Assistant)を取り出し、宇宙用品専門店を検索する。
「あっ、あったあった。ちょうど反対側かあ。先に調べとけばよかった」
文句を言いつつ、フィリオは地図をマサトへ転送する。マサトはコンタクトに投影された地図を見ながら、不満げなフィリオに提案する。
「まあ、途中に電器屋あるみたいだから、ついでに寄っていこうぜ。PDAも買い換えたほうが良いだろうし」
地球規模のネットワークが成立して以降、PDA自体には大きな処理能力を持たせず、ネットワーク上でデータ処理を行うのが主流である。しかし、地球から遠く離れた静止軌道プラットフォーム〝ほむら〟では通信容量に制限があるため、PDAにある程度の処理能力を持たせないと何かと不便である。また、〝ほむら〟内は十分にシールドされているとはいえ、宇宙線によりメモリの情報が反転してしまうソフトエラーが起こることも多々ある。
マサト達は散々迷った挙句、多少値は張るが多ビットエラー訂正機能付きCPUとホログラムメモリを搭載した機種を買うことにした。ゲーム好きなマサトは最新の光集積回路(PIC : Photonic Integrated Circuit)を搭載した機種を選ぶ。視覚情報は通信機能付きコンタクトレンズに投影されるため、PDA本体にはディスプレイはなく、入力デバイスであるタッチパネルのみが付いている。音声入力や視線センサも付いてはいるが、独り言を言うことになったり、目が疲れるため、PDAで使う人はあまりいない。
PDAを買い換えたマサト達は本来の目的地である宇宙用品専門店へ向かう。実習に必須なものはほとんど支給されるため、購入する必要があるのは日用品や生活用品である。マサト達は微小重力でも使えるボールペンや小物を収納するマグネット付きの収納袋、工具類を繋ぎ止めておくためのコードなどを購入した。
〝ほむら〟では1Gが維持された人工重力区画での生活がメインとなるが、実習中は数日間微小重力環境で過ごすこともある。微小重力環境では水の使用が制限されるため、水がなくても体を洗えるジェルタイプのセッケンやシャンプーも重要だ。また、微小重力環境では味覚が鈍感になるため、辛いものが大好きなフィリオは激辛の調味料を大量に購入した。
買出しを終えたマサトは、ようやく終わったという感じで息を吐いた。
「ふぅ、ようやく終わったな。これで大体そろったし、そろそろ帰るとするか」
「えっ、もう帰るの? せっかく久しぶりにモザイク来たんだし、服も見ていかない? ほら、僕たちの服って〝ほむら〟だと多分買えないよ」
フィリオが翼をぱたぱたとはためかせながら提案する。人ごみに疲れたマサトは内心早く帰りたいと思っていたが、フィリオが言うように相対的に人口が少ない有翼種の衣類は扱う店も限られている。〝ほむら〟では洗濯もそう頻繁にはできないため、服も買っておいたほうが良いかもしれない。マサトは体格の良いスカイ・ドラゴン種の中でも比較的背が高く、大きな店でないと好みの服が見つからないことが多い。
マサトはしぶしぶフィリオの意見に同意する。
「しかたないなぁ。じゃあ、ついでに寄っていくか」
「マサトはすぐお店の人が話しかけてくるから、服屋さんにはあんまり行きたくないんでしょ。今日は僕も一緒だし、心配しなくていいよ。マサトに似合う服は僕が選んであげるから」
表情からあまり乗り気でないことを察したのか、フィリオはマサトの背中を叩きながら言う。気遣ってくれるのは嬉しいが、フィリオが選ぶ服はポップすぎてマサトはあまり好まない。
「お気遣いありがと。まあ、今回は自分で選ぶからいいよ」
「遠慮しなくていいのに」
「じゃあ、とりあえずあの辺りから見てみるか」
残念そうに答えるフィリオを無視してマサトは近くにある店へ向かう。
「もう、勝手に行かないでよ!」
フィリオも慌てて追いかけ、一緒に店へ入る。店内をざっと見たところ、マサト好みの落ち着いたものは少なそうだ。
二人で店内を回っていると、先にフィリオが気になる服を見つけたのか立ち止まる。フィリオは服を手に取り、体に合わせてみる。首をちょこんと傾け、マサトを見上げながら尋ねる。
「ねえ、これって僕に似合ってるかな?」
フィリオのかわいい仕草にマサトはドキッとする。上目遣いにマサトを覗き込むフィリオを直視するとどうにかなってしまいそうだ。マサトは時々、フィリオがどう見えているか分かっててワザとやっているのではないかと疑うことがある。マサトは内心の動揺を抑えつつ、フィリオから目線をそらしてなるべく冷静に答えた。
「ああ、いいと思うよ。翼の色ともよくあってるし。すごいか……かっこいいよ」
思わず〝かわいい〟と言ってしまいそうになり、あわてて言い直す。
「ちゃんと僕を見てないのにホントに分かるの? やっぱり、早く帰りたい?」
動揺したマサトの態度を不安のためだと捉えたのかフィリオが気を使って聞き返す。今のマサトにフィリオをしっかり見る余裕は無い。
「いや、そんなことないって。このマフラーとかもフィルに似合うんじゃないかと思って、気になってたからさ」
マサトはごまかすように自分用に目をつけていたマフラーを手に取り、フィリオに渡す。
「マフラーってこれ? うーん、確かに悪くはないけど、どちらかというとマサト好みな感じだね。僕よりもマサトのほうが似合うんじゃないかな? ちょっとつけて見てよ。そうだ、こっちのカーディガンと組み合わせるといいんじゃない?」
フィリオは見ていた服を商品棚に戻し、マサトに試着を薦める。
「そっ、そうか?」
マサトは事態の急変にとまどいつつ、フィリオに進められるがままに試着室へ向かう。試着を終えたマサトを見てフィリオが嬉しそうに感想を述べた。
「ほら、やっぱりマサトにぴったりだって」
鏡で自分の姿を確認したマサトも悪くないと思った。少し派手かなとも感じたが、たまには趣向を変えて見るのも良い。せっかくフィリオが選んでくれたのだから、今回は受け入れておこう。ただ、自分で選ぶといった手前、素直に認めるのも悔しい。
「そうだな。フィルが選んだにしては結構いいかも」
「謙遜しなくていいって。マサトはかっこいいよ。僕が保障してあげる」
フィリオがはしゃぎながらマサトを褒める。マサトは店の客の視線を感じ、慌ててフィリオの口を塞ごうとする。
「あんまり大声で騒ぐなよ。店の人に迷惑だろ」
フィリオのストレートな賞賛に、マサトは嬉しさよりも気恥ずかしさを感じてきた。顔全体が熱くなるのが分かる。フィリオは自らの口を塞ごうとする手をひらりとかわし、マサトをからかい始める。
「マサトったら、そんなに恥ずかしがらなくていいのに。顔が真っ赤だよ。恥ずかしがってるマサトってなんだかかわいいね」
(かわいいのはフィルのほうだろ)
まさか自分がかわいいと言われるとは予想だにしなかったマサトは、心の中で言い返しながら、怒った振りをする。
「うぅ、うるせーよ! 大体なんだよ、かわいいって。男に言うことじゃないだろ。これ、気に入ったんだからさっさと買うぞ。次はお前のだからな」
照れるマサトをニヤニヤと見つめるフィリオを残し、マサトは試着室へ入る。結局、コーディネートも全て任せてしまったし、いつもいつもフィリオにいい様に操られているような気がする。
マサトが試着室から戻ると、フィリオは自分の買いたい服をすでに選び終えていた。かごの中を見るとマサトが薦めたマフラーの色違いが入っている。マサトの視線を追ったフィリオは笑顔で説明する。
「せっかく、マサトが選んでくれたんだから、買っておこうかなと思って。色だけは僕の好きなものにしたけどね。まあ、おそろいで付けちゃうとまたマサトが真っ赤になって大変だから、気を付けないといけないけど」
「別に恥ずかしがってなんかないって。あれはフィルが子供みたいに騒ぐから恥ずかしくなっただけだし」
弁解しながらも、マサトはフィリオとおそろいのマフラーをつけているところを想像してしまい、また赤くなる。
「さっ、買うもの決めたんならさっさと買おうぜ」
マサトは自分の顔を見られないようにフィリオに背を向け、早足でレジへ向かう。
清算を終えたマサト達は雑談しながら通りをぶらつく。すでに日は傾き、西日がまぶしくなってきている。夕方になって人も少なくなってきたようだ。数時間ずっと歩きっぱなしだったため、マサトは少し甘いものがほしいと思う。
「なあ、フィル。ちょっと疲れてきたし、軽く食べないか?」
「そうだね。いっぱい買っちゃったし、おなか減ってきたね。夕食が近いのがちょっと気になるけど、明日休みだしご飯は遅めでもいいかな」
「今日は俺が飯作るの当番だから、調整するよ。最近、おいしいドーナツ屋ができたらしいから行って見ようぜ」
「さすが! 甘党のマサトは情報が早いね。いいよ、行って見ようよ」
マサト達は最近話題のドーナツ店へ向かう。話題になるだけあって、店の前には行列ができている。マサト達は行列に並び、二十分ほど待ってようやく店内に入った。様々な種類のドーナツが並んだ棚から好きなものをトレイに乗せ、カウンターでドリンクを注文する。マサト達は窓際にテーブルを確保し、腰を下ろした。
「いやー、さすがに人でいっぱいだな」
「最近オープンしたみたいだからね。それにしても、マサト、すごく甘そうなドーナツばかりだね。飲み物も甘そうだし、そんなに食べて晩御飯は大丈夫なの?」
マサトのトレーに載っているチョコレートや生クリームがたっぷり入ったドーナツの山を見て呆れたように言う。
「大丈夫、大丈夫。これくらい余裕だって。それはそうとさ、来週から実習だな。ようやく本格的な訓練ができそうで楽しみだよ」
マサトは言いながらチョコレートでコーティングされたドーナツを口いっぱいにほお張る。フィリオは片肘をついてマサトに同意する。
「そうだね。いよいよだね。考えてみれば、マサトにあの事件の原因を解明するために一緒に宇宙へ行こうっていわれてからもう五年も経つんだね。あの時はホントに実現するとは思っていなかったけどなあ。今まで、何回もあきらめそうになったけど、頑張ってこれたのはマサトがいてくれたおかげだよ」
表面上は立ち直ったように見えても、両親を亡くした事件の話題に触れるとフィリオの表情は曇る。フィリオのこんな表情は見たくない。早く一人前になって二人で事件を解明しないとマサトは思う。原因調査のために二人で宇宙探査へ向かうという夢もようやく現実味を帯びてきた。
マサトはドーナツをカフェオレで流し込み、フィリオに答える。
「んぐ。フィルには色々助けてもらってるし、こっちがお礼を言いたいくらいだよ。でもまだ第一歩ってとこだから、もっと頑張らないとな。これからがようやく本番だぞ。」
マサトはこぶしをぎゅっと握り締めて気合を入れる。
「確かに、今までよりもっと厳しいことが有りそうだもんね。でも、僕にはマサト達が付いてるし、きっと大丈夫だよ」
フィリオがマサトの目を見つめて言った。少し照れくさいが、マサトはフィリオに頼りにされたことを嬉しく思う。今まではフィリオに助けてもらってばっかりだったが、これからはフィリオを助ける番だ。
「ところで、マサトは専門教科何にしたの? 僕はお父さんやお母さんと同じ生命工学にしたよ。やっぱり研究職を目指したいしね。お父さん達は生命の起源を探る調査で事故にあったんだし、研究内容が事故に関係しているように感じるんだよね」
フィリオは自分の夢を語った後、歯をかみ締める。フィリオの両親は生命工学を専門とする研究者で、父親オーバン=ユーレは生命の起源を求めて火星と木星の間にあるメインベルトや木星公転軌道上のトロヤ群、海王星の外側にあるカイパーベルトから離脱した彗星や小惑星の調査を行っていた。母親アナ=ユーレはシミュレーションを使って生命誕生に関する研究を行っていたが、結婚してからはマサトの両親と共に実地調査に向かうことが多かった。
根拠は全くないが、マサトも事故の原因には二人の研究が関係していると思っている。大切な人の死に意味を求めたくてそう思ってしまうのかも知れないが、単なる事故としては謎が多すぎると感じる。単なる事故なら、父もこんなに長く調査を続けているはずが無い。マサトも真剣な表情で頷く。
「そうだな、俺もおじさん達の研究が関係してると思う。俺のお父さんもそう考えているみたいだったし。フィルが研究者になって、調査隊を組織するにもパイロットは必要だろ。だから、俺は専門は物理にしたぞ。宇宙機のパイロットになるためには物理が必須だしな」
マサトの父親空木寛は宇宙機のパイロットをしており、普段はフィリオの両親と構成した調査グループのリーダーも兼ねていた。フィリオの両親が失踪した事故が起こったときは、マサトの母親睦が病気を患い看病が必要だったため調査グループを率いることができず、フィリオの両親はいつもと異なる調査グループに参加していた。調査の目的地は彗星588P/Alexiの調査だったが、何が原因でどんな事故が起こったのかはほとんど分かっていない。
事故直後のユタカの調査で乗っていた宇宙機は発見されたが、フィリオの両親は見つからなかったらしい。宇宙機の状況から既に死亡しているとされたが、その事故にはまだまだ謎が多く、事故から五年がたった今でもきっかけすら殆ど掴めてないとマサトは父親から聞いている。
フィリオはあごに手を当てて頷く。
「マサトの目標はやっぱりパイロットか。僕が研究者になれたらヨロシクね。そういえば、マサトのお父さんはすごいパイロットみたいだね。僕のお父さんもよくおじさんのことを自慢してたよ。おじさんは最高のリーダーだって。考えて見ると、僕もおじさんを見習えってよく言われたなあ。なんで自分を見習えって言わないんだろうって疑問に思ったのを良く覚えてるよ。マサト、宇宙でお父さんに会えるといいね。僕もおじさんに早く会いたいな」
フィリオはすでに日が落ち、星がきらめき始めた夜空を見て言った。オーバンの親友であったユタカは原因調査のため、オーバン達の目的地の彗星アレクシィを追って長期にわたる探査へ出ている。マサトもフィリオの視線を追って、夜空を見ながら答える。
「フィルは俺達のリーダーやってるんだから、言いつけ守れてるじゃん。俺なんかよりもよっぽど凄いよ。俺も少しはフィルを見習わないと父さんに合わせる顔がないな。まあ、父さんは外縁部まで行ってるから会うのは結構先になりそうだけど」
「心配しなくてもそれまでに僕が鍛えてあげるよ」
マサトに褒められたフィリオはマサトのほうへ向き直り、両手を広げていつものようにマサトをからかい始める。フィリオなりの照れ隠しなのだろう。
マサトは腕を組み、フィリオに反撃しようと試みる。
「フィル、そうやって直ぐに調子に乗るところは直したほうがいいとおもうぞ。パイロットがリーダーを兼ねることって多いんだからな」
マサトの反撃にフィリオは手を振りながら答える。
「無理無理。マサトにリーダーが勤まらないのはよおく分かってるから。僕のリーダーの座は安泰だよ。お父さんはあんなにすごいのに、親子ってあんまり似ないもんなんだね」
フィリオは普段、おっとりした口調で丁寧な言葉遣いなので、周りからは優しいと思われているのだが、親しい間柄になるときつい事をズバズバと言う。十数年の間、一緒に暮らしているマサトはその言葉が信頼の証だと知っているので、特に気にはしていないが、もう少し優しくして欲しいと時々思う。
「はいはい。分かりました。俺らのリーダーはフィリオ様ですよ。しっかり頼みますよ、リーダー殿」
マサトは反撃をあきらめ、わざとらしく両手を挙げて降参のポーズをとる。今までの経験上、これ以上抵抗しても罵声がエスカレートするだけだ。
「そうそう。そうやって素直に従ってればいいの。さっ、飲み物が冷めちゃうから、早く食べよ」
中途半端な皮肉は通じないフィリオに苦笑しつつ、マサトはキャラメルシロップがたっぷりかかったカフェラテを口に含む。口いっぱいに広がる甘さとほんの少しの苦味。少し不安も有るけど、期待がいっぱいつまった後期実習を暗示しているかのようだ。甘いクリームがいっぱい詰まったドーナツを口に入れ、フィリオとの関係についても思いを馳せる。フィリオともこんなに甘い生活ができれば最高なのにな。今のままでも十分に甘いような気も若干するけれど。
ドーナツを堪能したマサト達はモザイクを出て駐輪場へと向かう。日は完全に落ち、空には今にも消えそうな細い三日月が浮かんでいる。月のそばをすうっと走る光の点は地球を周回する低軌道ステーションだろうか。
マサトは夜空を見上げながら思う。来週からの実習ではあのステーションよりもずっと遠くへ行くことになる。俺達が求める謎の答えはもっと遠くだ。この広い宇宙で答えを見つけるのは、砂漠から一粒の砂を探すくらい難しいかも知れないけれど、フィリオと一緒ならいつか正解にたどり着ける気がする。
「すっかり真っ暗だね」
「そうだな。それにしてもずいぶん冷えるな。フィル、大丈夫か?」
翼で体を被い、両手をさすりながらマサトが尋ねる。フィリオは買い物袋に手を入れ、ごそごそと何かを探している。
「あっ、あったあった。マサトが選んでくれたこのマフラーがあるから大丈夫だよ」
「そういえばマフラー買ってたな。俺もマフラーしよっ」
マサトも自分の買い物袋の中からマフラーを探し始める。
「ふふっ、早速おそろいになっちゃうね」
マフラーを首に巻きながら、くすくすと笑い声を上げるフィリオ。一瞬手を止めたマサトはフィリオから顔をそらす。
「こんなに暗いと誰も分からないだろ」
マサトは顔が赤くなるのが自分でも分かる。顔を隠してくれる暗闇が有り難い。今日が満月じゃなくて良かったとマサトは思う。
「さっ、凍えないうちに帰るぞ」
「うん」
暗闇を切り裂くように二人は未来へ向かって漕ぎ出した。
つづく
スカイ・ドラゴンの♂16歳。外見は豪胆そうだが、人付き合いは苦手で極度の人見知り。親友のフィリオと一緒に住んでおり、いつも二人でいる。勉強、運動ともに良くでき、学内の成績はトップクラス。父親は優秀な宇宙機のパイロットで、自身もパイロットを目指すために専門課程に進学した。趣味はゲーム、読書と散歩。かなりの甘党
エア・ドラゴンの♂16歳。幼いころに原因不明の事故で両親を失くし、マサトの両親に引き取られた。しっかりもので明るく、人付き合いも良い。将来は両親と同じ生命工学の研究者を目指している。丁寧な言葉遣いとは裏腹に、きついことをズバズバと言う。趣味は買い物とカラオケ。辛いものが好き
フェレットの♂16歳。何時も元気で考えるより先に行動するタイプ。感情に素直でいたずら好きだが正義感は強い。
ホワイトウルフの♂28歳。ほむらの現役環境システムエンジニア。普段は物静かだが、仕事のこととなると熱くなる。学生から怖いと思われていることを気にしている。